「金正恩氏、トランプ氏との会談に意欲」 脱北の元公使が語る

昨年韓国に亡命したテ・ヨンホ元北朝鮮駐英公使

2017.01.26 Thu posted at 11:34 JST

ソウル(CNN) 韓国に昨年亡命したテ・ヨンホ元北朝鮮駐英公使は26日までにCNNの取材に答え、北朝鮮の運命を変える唯一の方法は国の指導者を変えることだけだと訴えた。テ氏はこの約20年間で最も高位の脱北した外交官とされる。

テ氏は昨年、妻子とともに韓国へ亡命した。

テ氏は、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が権力の座にある限り、人権問題が改善したり、核開発が中止になったりする可能性はないとの見方を示す。

テ氏は当初、金委員長の若さや海外の学校に通っていた経験から同委員長が改革者となるのではと期待していた。しかし、高位の当局者が何人もほとんど気まぐれで処刑されるのを目にして、期待はすぐに打ち砕かれたという。

韓国のシンクタンクによれば、金委員長は、2011年に政権に就いて以降、少なくとも340人の処刑を命じた。

テ氏によれば、米国でドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利したことについて、金委員長はこれを米国の新政権との間である種の和解を結ぶ好機だととらえているという。

トランプ氏は選挙戦の間、金委員長と会談を行う用意があるとの考えを示唆していた。ただ、テ氏はトランプ大統領に対して再考するように求めている。会談を行えば、金委員長に現在自国で保持していない正統性を与えてしまうことになるからだという。

トランプ米大統領との会談にも意欲を示しているという金正恩・朝鮮労働党委員長

テ氏は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席もロシアのプーチン大統領も金委員長とは会っていないと指摘する。

テ氏によれば、恐怖を通じて忠誠心を得ようとしているものの、金委員長は依然として正統性の確保に苦慮しているという。「権力の座について5年になるのに、自分の誕生日や母親、祖父との関係について北朝鮮の人々に語ることさえできない」と指摘する。

テ氏によれば、昨年3月の国連安保理による制裁は機能しているという。金委員長は国内に14の経済特区を創設し、外国からの投資を促すための2省庁を立ち上げようとしていたが、その後、その2省庁は解体されたという。

テ氏は制裁について、北朝鮮経済に非常に強い影響を与えるほか、北朝鮮の人々や高位の当局者に対する心理的な効果もあるという。

ただ、それだけでは十分ではなく、もっと制裁に取り組むよう中国を説得する必要があるとの見方を示す。

テ氏は、現金のために北朝鮮国境から密輸される天然資源を阻止する必要があるほか、北朝鮮の核開発プログラムにより真剣に取り組まなければならないと指摘する。

現最高指導者の金委員長は、依然として自らの正統性の確保に苦慮しているという

北朝鮮にいる親族について尋ねるとテ氏は声を落とした。

テ氏は、今回の脱北を受けて罰として親族が収容所に送られた可能性があることを認めた。また、テ氏に対抗するために体制に利用される可能性もあるという。

テ氏は妻子が一緒にロンドンにいたことは非常に幸運だったと語る。テ氏は金委員長が外交官の子どもたちを人質のように利用していると指摘。金委員長は親子の愛情でさえも悪用することがあるという。

テ氏は息子たちのために、「奴隷の鎖を断ち切る」ための機会を逃すことは出来なかったと語る。

それでもテ氏にとって、脱北は良いことばかりというわけではない。テ氏は「脱北によって自分の人生は非常に悲惨なものとなった。人生の50年間を間違った側で過ごしてきて、自分の過去を否定しなければならなくなった」と語った。

脱北の元公使、北朝鮮の体制を語る

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