悪魔の耐性菌、想定より感染拡大の恐れ 症状出ない保菌者も

「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」に関する研究が進められている

2017.01.17 Tue posted at 11:57 JST

(CNN) 抗生剤に対して強い耐性を持ち、「悪夢の耐性菌」とも呼ばれる「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)」が、これまで考えられていたよりも感染を広げている可能性があるという研究結果が17日までに米科学アカデミー紀要に掲載された。患者に症状が出ないまま人から人への感染が起きている可能性もあるとしている。

カルバペネム系などの抗生剤は、普通の医薬品が効かない細菌に対して最後の手段として使われる。CREのような耐性菌はそれでも繁殖が止められないことから悪夢の耐性菌とも呼ばれる。

米疾病対策センター(CDC)によれば、米国では病院や長期療養施設でCREの院内感染が起きて年間で推定9300人が感染し、600人が死亡している。症例数は増加傾向にあるという。

ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは16カ月にわたり、マサチューセッツ州ボストンとカリフォルニア州アーバインの4病院でCREに感染した患者の検体約250例について遺伝子配列を調べ、感染が起きる頻度や院内感染を発生させている細菌株について調査した。

その結果、症状が出た患者から直接感染した事例はほとんど見つからなかった。このため研究チームでは、感染しても症状が出ない保菌者が感染源になっていると推定する。

CDCの専門家によると、ほとんどの患者はCREに感染しても症状が出ず、そうした患者が感染源となってCREを拡散させているケースが多いという。

研究チームでは、「違う種の中にある同一の遺伝子が、驚くほどの程度で確認された」とも報告。「我々には説明できない高いレベルの耐性も2つの症例で見つかった」としている。

ただ、研究予算には限りがあり、今回の調査対象とした病院以外の長期療養施設などで院内感染が起きているかどうかは把握できなかったという。

ネバダ州リノの病院では最近、実際にCREの症例が報告されている。患者はインドに長期滞在していて昨年8月に米国に帰国した70代の女性で、帰国後に全身性炎症反応症候群を発症してリノ病院に入院した。女性はその2カ月前にインドで入院したことがあった。

リノ病院に入院してから約6日後に、この女性がCREの1種のNDMに感染していることをCDCが確認。この細菌は、米国で入手できる26種類の抗生剤すべてに対して耐性を持っていることが分かった。そのようなケースは極めてまれだという。医師団はあらゆる手を尽くしたが、女性は9月初旬に死亡した。

地元衛生当局は、同じ病棟に入院していた患者の検査を行ったが、ほかにCRE感染者は見つからなかった。女性が個室に入院していたことも幸いしたという。

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