脱北者が「解説」 観光写真の向こうにある本当の北朝鮮

2017.01.22 Sun posted at 20:45 JST

(CNN) 北朝鮮への旅は以前にくらべれば普通のものになっており、世界で最も孤立し、不可解で、恐れられている国のひとつである北朝鮮の内部をのぞいてみたいと思っている人は増えている。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長も歴代指導者に比べると観光客を歓迎する姿勢が強いようだ。

ただ、それはある程度までに過ぎない。

観光客の行動には厳しいガイドラインが設けられている。観光客は何ができるのか、何を見られるのか、さらには質問できることも制限されている。決まりを破ったり、そうした行動が疑われたりでもすれば、代償を払うことになるだろう。過去や現在の北朝鮮の指導者に対する敬意を欠いていたり、単独行動を取ったり、許可なく現地の人に話しかけようとするといった行動がこれに該当する。

米国の北朝鮮専門サイト「NKニュース」はこのほど、北朝鮮の実態を明らかにするため脱北者や専門家に依頼して、写真家のクリス・ピーターセンクローゼン氏が2016年に撮影した写真の背景を説明してもらった。

2005年に北朝鮮の首都・平壌を逃れ英国に移住したカン・ジミン氏は「この写真を見ると、ラッシュアワーの平壌が大混乱に陥っていたことを思い出す」と指摘。「停電が起こってバスが道の真ん中で停止してしまうのを心配し、非常に神経質になったことも覚えている」と語る。

14年に平壌から韓国に逃れたキム・ジュンヒョク氏は「北朝鮮国民がひとつの場所をこのようにじっと見ているのは外国人が通りかかった時だけだ」と付け加える。

14年に平壌を逃れ韓国に移住したハン・ソンチョル氏は「これらの少女たちは北朝鮮の学生スポーツチームに所属しているようだ」と説明。「ちゃんとしたトレーニングシューズではなくスニーカーで練習している」と述べる。

カン・ジミン氏は「北朝鮮の女子サッカー選手がアジアで躍動した時代もあった」と指摘。「この写真から分かるように、選手たちはきちんとした芝の上ではなくアスファルトや砂の校庭で練習するしか選択肢がない」と述べる。

ロシア人の北朝鮮研究者、フョードル・テルティツキー氏は「これは凱旋門だ。故金日成(キムイルソン)主席が日本から朝鮮を解放したとされることを記念して建てられた」と説明。「実際に起こらなかった事態を記念して作られた建物としては世界最大級かもしれない」と述べる。

カン・ジミン氏はセレモニーについて、「北朝鮮国民は白髪を生やした歴戦の将軍の姿を見ることを期待していたとされる」「だが当時まだ30代で、中国人の食品配達人のような金日成氏が現れたのを見て、人々は失望した」と指摘する。

「これは移動用の宣伝車だ」「ガソリン不足のためこうした人力の車両が存在している。北朝鮮の地方部では春や秋の農繁期になると、こうした車両を使って宣伝活動を行っている」(ハン・ソンチョル氏)

カン・ジミン氏は改装された朝鮮中央動物園について、「銃殺隊に処刑された収容者はこの動物園の生き物のえさになっていると一時うわさされていた」と話す。

カン・ジミン氏は平壌に新設された「未来科学者通り」に関し、「これらの建物は私が平壌にいたころは存在しなかった」と指摘。「私が平壌に住んでいたころは、電気を利用した暖房を使っているのが見付かっただけでも市外に追放された。光復通り周辺では今でも、煙で汚れた窓や斜めに傾いた煙突が多く見られるはずだ」と述べる。

テルティツキー氏は「北朝鮮では冷蔵庫を持っているのは裕福であることの証しだ」「電力が供給されていないのに冷蔵庫を買う場合すらある」と指摘する。

「この男性は大学生の矯正委員だ」「平壌には大勢いる。主に女性を標的にしている。平壌の女性が市街で『困難』に直面しかねないのはこのためだ。彼らの仕事は色鮮やか過ぎるズボンや服を身に着けた女性を規制することだ」(ハン・ソンチョル氏)

カン・ジミン氏は「学生だったころ、徴用されて田植えの時期に水田で働いた記憶がある」と振り返る。同氏によれば、神経質な学生は当初「ヒルを目にしただけで悲鳴を上げる」こともあったが、すぐにこうした環境での仕事に慣れた。「学生たちは大きなヘビがそばを通りかかっても驚かなかった」という。

「これはドンジュ(北朝鮮のエリート)が美林乗馬クラブで楽しんでいる様子だ」「料金は1時間につき約10万ウォン。北朝鮮の普通の労働者の給与4年分だ」(ハン・ソンチョル氏)

「右の男性は朝鮮少年団のあいさつの身ぶり『ハンサンジュンビ』をやっている。『常に準備』という意味だ」「身ぶりもかけ声もソ連の少年団から取ったものだ」(テルティツキー氏)

カン・ジミン氏には平壌で交通整理に当たる女性に懐かしい思い出がある。「自分が若かったころ、交通整理の女性たちが本当に魅力的に見えたのを覚えている」「私は当時、思春期に差し掛かったころで、こうした女性のスカートがもう少し短ければとひそかに思ったものだった」と振り返る。

キム・ジュンヒョク氏は「腰のところにある機械は手動の信号操作器だ」と付け加える。

「このトラックはもみ殻を養豚場に運んでいるところだ。北朝鮮では今でも1958年製のトラックが使われている」「この種のものが今でも走っているのは奇跡だ」 (カン・ジミン氏)

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