和歌山県田辺市(CNN) 合気道はよく、体、心、気が一体化した武術と言われる。また、攻撃する者の安全を防御する者の安全と同じくらい重視するという独特の哲学に基づく武術でもある。
物理的な面では、合気道は固める、つかむ、投げるという動作を通じて攻撃の力を無力化する一種の護身術だ。
真の勝利は自分に勝つこと
しかし、合気道にはパンチやキックといった攻撃の技がないため、格闘界では、例えば総合格闘技の選手との対戦では合気道など通用しないとする意見もある。
合気道のような攻撃を禁じている武術が、熟練の空手家やムエタイ選手の技にどう立ち向かうのか。
この疑問を解消すべく、われわれは国際合気道連盟の事務総長で合気道の師範でもある井沢敬氏に合気道の哲学について話を聞いた。
井沢氏によると、合気道は武術ではあるが、その主目的は相手を倒すことではないという。
創始者の植芝盛平翁は、それを「正勝吾勝(まさかつあがつ)」と表現した。これは「己に勝つことこそ真の勝利」という意味だ。植芝氏が目指したのは、愛と和合に基づく武術だ。
合気道には競技会がないという。合気道家は誰もが上達したいと願っているが、ライバルの打倒という利己的な目的で上達を目指そうという気はない、と井沢氏は語る。
この哲学こそが、老若男女、健常者、身体障害者を問わず、すべての人が合気道に魅力を感じる理由だ、と井沢氏は言う。
井沢氏によると、合気道家たちは日頃の鍛錬の成果を道場の外の日常でどのように生かしているか、しばしば口にする。例えば、前向きな方法で紛争を解決する、困難な状況で解決策を見出しやすくする、心身ともによりリラックスした状態を作り出す、集中力が要求される場面でより高い能力を発揮する、といったあらゆる応用が可能だという。
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次回「『和の心』磨く武術、合気道のルーツを探る<4> 旅の終わりに」は4月10日公開