歴史つくったiPhoneの10年、「次の革新」切望する声も

開発失敗の危機を乗り越え世に出たiPhone。今後はどのような進化を遂げるのか

2017.01.10 Tue posted at 11:44 JST

ニューヨーク(CNNMoney) 「我々は今日、共に歴史をつくる」――。今から10年前の2007年1月9日、米アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏はこの言葉でプレゼンテーションを切り出し、「3つの革新的な製品」を披露した。

その3製品とは、タッチ式の携帯音楽プレーヤー「iPod」と携帯電話の新モデル、そして今はiPhoneと呼ばれるようになった「画期的なインターネット通信端末」だった。

このデモの間、初代iPhoneの開発にかかわった当時のアップル従業員は、大混乱も予想しながら観客席で身構えていた。

「あの日のことで覚えているのは、デモがあまりに危うかったので、並べておいたスコッチを1杯ずつ飲んでいったこと」。iPhoneの筆頭デザイナーだったアンディ・グレニヨン氏はそう打ち明ける。

アルバムカバーのスクロール操作、2本指の操作による画面の拡大、通話機能の実演。ジョブズ氏がそうした機能のデモを1つひとつ成功させるごとに、グレニヨン氏はスコッチを1杯ずつあおって勝利を祝ったといい、「ものすごい恐怖と興奮が入り混じった気分だった」と振り返った。

プレゼンテーションは無事に終わり、この場で紹介された製品は本当に歴史をつくった。あれから10年。アップルが販売したiPhoneは10億台を突破。iPhoneはスマートフォン市場を塗り替え、数え切れないほどの裕福なアプリ開発者を生み出し、アップルを時価総額世界一の企業に押し上げた。

当初の懐疑的な見方を覆し、iPhoneの売り上げは10億台を突破

2016年9月30日の時点で、iPhoneの売上高は総額1350億ドル(現在のレートで約15兆6000億円)を超え、アップルの売り上げの半分以上を占めるようになった。iPhoneのために創設されたアプリ配信サービスの「App Store」だけでも、16年の1年間で200億ドルを超す収益を開発者にもたらしている。

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は登場から10年を記念して、「iPhoneは最初の10年でモバイルコンピューティングの標準を確立した。だがこれはまだ始まりすぎない。ベストはこれからだ」との談話を発表した。

しかし当時は誰もが成功を予想していたわけではなかった。

初代iPhoneは容量わずか4ギガバイト、米国での価格は499ドル、利用できる携帯電話会社は1社のみで、App Storeもまだ存在していなかった。

懐疑的な意見も多く、その筆頭格だったマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(当時)はiPhoneの印象を尋ねられて「世界一値段の高い電話だ。キーボードがないので電子メールにも適さないし、ビジネス顧客にとって魅力はない」と一笑に付していた。

そうした見方が誤っていたことはやがて証明される。一方で、iPhoneとアップルが現在のような独占状態を続けられるかを巡っては新たな疑問も噴出している。

初期の主要アプリを提供してきた開発者は、App Storeで配信されるアプリの激増に伴って、同ストアだけでは経営が立ち行かなくなってきた。人気アプリの開発を手掛けた元アップル従業員のローレン・ブリヒター氏は、「本当に面白くて経済的に持続可能なアプリの開発は難しくなった。だから私は別の所へ労力を注いでいる」という。

アップルに対しては、iPhoneのヒットの再現を期待する声が高まっている

iPhoneの販売は昨年、初の減少に転じた。世界のスマートフォン市場は飽和状態への懸念が浮上し、iPhoneの最新モデルはそれまでのモデルとほとんど変わらないと見られている。

そうした要因から、アップルの2016年の売り上げは目標に届かず、クック氏を筆頭とする経営陣の賞与はカットされた。

アップルはiPhone10年目の記念モデルで大幅な刷新を行い、今年9月の発表会で披露する予定だともうわさされている。

年内はそれでiPhoneに対する関心を改めてかき立てることはできるかもしれない。だがジョブズ氏があの「3つの革新的な製品」を披露してから10年が過ぎ、アップルに新しい画期的な製品を切望する声は強まっている。

「(iPhoneのおかげで)同社は筆頭級の革新企業として脚光を浴びた。だがそれがアップルに対して、もう1度同じことをやってほしいというほぼ実現不可能なレベルの期待を負わせることになった」「iPhoneのようなヒットをもう一度という期待は度を越している」。アップルに詳しいアナリスト、ティム・バハリン氏はそう指摘している。

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