(CNN) 幹線道路の近くに居住すると認知症を発症するリスクが高まる可能性があることが5日までに分かった。カナダの研究チームが英医学誌ランセットに調査結果を発表した。
それによると、幹線道路から50メートル以内に住んでいる人は、そうでない人に比べて認知症を発症するリスクが7%高いことが分かった。幹線道路から離れるほどリスクは低くなり、50~100メートルでは4%、101~200メートルでは2%に低下。幹線道路から200メートル以上離れると、リスクの上昇は見られなかった。
研究を主導したカナダ・オンタリオ州公衆衛生局のレイ・コープス氏は、「幹線道路に近付くほど徐々にリスクが高まる」「200メートルに到達するまでに、リスクは実質的に基準値まで低下する」と解説する。
幹線道路の定義は1日の交通量を基準としており、米国では州間幹線道路に相当するという。
これまでの研究でも、大気汚染や交通の騒音にさらされると脳内の神経が劣化する可能性が指摘されていた。大気汚染を引き起こす特定の粒子は呼吸を通じて脳に到達することも最近の研究で判明している。
コープス氏の研究チームはオンタリオ州に住む20歳から85歳までの成人660万人を2002~12年の10年間にわたって継続調査。郵便番号を使って幹線道路からの距離を算定し、診療記録と照らし合わせて認知症や多発性硬化症、パーキンソン病との関係を調べた。
その結果、幹線道路からの距離と多発性硬化症やパーキンソン病との因果関係は見られなかった一方で、認知症についてはリスクが高まっていることが分かった。
ただし「1回だけの研究では因果関係は立証できない」とコープス氏は指摘。今後は大気汚染を引き起す粒子と認知症との関係や、騒音との関係についても詳しく調べることにしている。