中国空母「遼寧」、太平洋を航行 軍事力拡大を誇示

空母「遼寧」の飛行甲板に駐機した中国軍の戦闘機「殲15(J15)」

2016.12.28 Wed posted at 13:10 JST

(CNN) 中国の空母「遼寧」がこのほど太平洋を航行し、周辺国が警戒を強めている。今回の航行には中国の軍事力を誇示し、海軍の戦闘能力強化を図る狙いがある。

遼寧は先週、黄海上で「殲15(J15)」戦闘機の空中戦および空中給油の訓練を実施した。その後フリゲート艦と駆逐艦の艦隊に先導されて台湾および沖縄沖を通過し、太平洋に進出。26日には複数の国が領有権を争う南シナ海に入った。

近隣国や地域は警戒を強めており、台湾の馮世寛・国防部長は「敵の脅威は日増しに増大している。我々は常に戦闘態勢を維持していなければならない」と強調した。

遼寧は1998年に中国がウクライナから調達し、2012年に改造して訓練艦として就航させた。

日本の防衛省によると、遼寧が太平洋に進出したことを確認したのは初めて。菅義偉官房長官は「中国の海上戦力の能力拡大を示すもの」との見方を示し、動向を引き続き注視すると語った。

中国国営の英字紙グローバル・タイムズは遼寧の訓練に合わせて25日に掲載した論説で、中国による空母艦隊の増強、戦闘態勢の確立、太平洋東部への航行、南米の海軍補給基地設置の必要性を強調した。

今回の訓練については、遼寧の戦闘能力強化と航行範囲拡大の証と位置付け、間もなく米西海岸沖を含む太平洋東部にも進出できるとした。

フリゲート艦などに先導されて太平洋へ進出した中国の空母「遼寧」

「中国の空母艦隊がいずれ米国沖に進出すれば、海洋支配に関する集中的な思考を誘発させる」「米国が中核的な関心を持つ地域に同艦隊が進出できれば、米国が一方的に中国に圧力をかける状況は変化する」。論説ではそう述べ、中国は国産空母の建造を急ぐ必要があると力説している。

米太平洋軍の元幹部でハワイ太平洋大学教授のカール・シュスター氏によると、中国では新しい空母1隻が完成に近づいていると見られ、もう1隻は建造に着手するところだという。

しかし中国の空母が脅威となるのはまだずっと先だと同氏は予想。「中国には空母戦力の基盤となる経験豊富な海軍飛行士や空母乗員の部隊がない。それを一から築き上げることは、ほとんどの人員を2年の徴兵に頼る部隊にとっては難しい」と指摘する。

シュスター氏によれば、中国は2027~29年までに空母4隻の艦隊を築くことを目指しているという。

それでも艦隊の規模は、空母10隻を運用する米海軍の半分にも満たない。米海軍はさらに1隻を間もなく就航させる見通しで、もう1隻の建造も進めている。

ただしグローバル・タイムズでは当面の間、中国はいわゆる「第1線」を越えた範囲にまで影響力を拡大する必要があると主張。この第1線は、南シナ海のパラセル(西沙)諸島の北から北東に進んで台湾を内側に取り込み、沖縄の西を通過し、さらに北へ折れて韓国と中国の間の東シナ海に至る。同紙は「中国の艦隊がまだ到達したことのない海域にまで航行する能力と勇気を持たなければならない」と強調している。

中国空母「遼寧」が太平洋に進出

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