ワシントン(CNN) 国連安全保障理事会は23日、イスラエルによる入植地建設を非難する決議を採択した。イスラエル当局とトランプ次期米大統領はオバマ政権に対し拒否権の行使を求めて圧力を加えたが米国は棄権、採決の実施を容認した。
決議案はイスラエルに対し東エルサレムを含むパレスチナの占領地でのすべての入植活動を即時に完全に停止することを求めるもので、米国を除く14カ国の賛成票で承認された。採決の後には会場で拍手が起こった。
今回の採決は、米国のオバマ政権とネタニヤフ政権の間で数年に及んだ反目のおそらく最後の章を苦い形で締めくくるものとなる。
採決に先立つ2日間には、激しい外交駆け引きが繰り広げられた。イスラエル当局の高官は、拒否権行使による決議阻止を拒むことでイスラエルを見捨てているとして米国を批判した。
トランプ氏もこの外交劇に介入。米国の大統領はいちどきに一人しかいないとの慣習を破り、安保理で拒否権を行使するようオバマ政権に求めていた。
イスラエル首相府は声明で、国連と「共謀」したとしてオバマ政権を批判。「このばかげた決議がもたらす有害な影響を打ち消すため」、トランプ氏やイスラエルに友好的な連邦議会の議員と協力することを楽しみにしていると述べた。
一方、米国のパワー国連大使は採決後、入植地拡大への反対はレーガン元大統領以来、民主・共和両党の米大統領に受け入れてきた超党派の合意に沿ったものだと主張。「今回の決議は、現在の方向で進めば2国家解決案が恒久的に壊されてしまう流れを反映している」と述べた。
ただ、今回の投票はイスラエルの安全保障に対する米国の揺るぎない姿勢をいささかも減じるものではないとも強調した。
パレスチナ人は外交面で得た数少ない勝利に喜びを示した。パレスチナの指導者の一人、ムスタファ・バグーティ氏は「パレスチナの人々とその大義のための勝利であり、入植に対する制裁の要求に向けた可能性が大きく開いた」と述べた。
米国や他国の大半はヨルダン川西岸や東エルサレムへのイスラエル人の入植について、イスラエル人とパレスチナ人との間での2国家解決の望みを阻む障害とみなしている。
一方、トランプ氏は短文投稿サイトのツイッターで、「国連に関しては(就任式がある)1月20日以降に事態が変わるだろう」と発言し、自身の大統領就任後はパレスチナ人が国連での土台を失うだろうとの考えを示した。
トランプ氏はイスラエルの米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移転する考えを示したほか、入植者を支持するデービッド・フリードマン氏をイスラエル大使に任命する動きも見せている。
ローズ米大統領副補佐官(国家安全保障担当)は23日、オバマ大統領がトランプ氏とこの件について会話したかはわからないとしつつ、オバマ大統領が決断したのは同日朝だったと述べた。
決議案は当初、エジプトが21日に提案したが、イスラエルからの圧力でいったん取り下げられた。その後、ニュージーランド、ベネズエラ、マレーシア、セネガルの4カ国が再び提案し、23日に決議にかけられた。
国連安保理、イスラエル入植の非難決議採択