(CNN) 昨年8月にアムステルダム発パリ行きの国際特急列車タリスの車内で銃撃テロを企て、乗っていた米兵らに取り押さえられたモロッコ人のアユーブ・ハッザニ容疑者が、仏捜査当局の調べに対して自供を始めた。捜査状況に詳しい情報筋がCNNに語った。
ハッザニ容疑者は過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」のメンバーで、昨年11月のパリ同時多発テロの首謀者だったISIS幹部、アブデルアミド・アバウド容疑者から直接、列車内の米国人らを殺害するよう指示を受けたと話している。
ハッザニ容疑者とアバウド容疑者のつながりをめぐっては、ハンガリーの対テロ当局がすでに、タリスの事件の数週間前に2人が一緒に欧州入りし、同国を通過したことを突き止めていた。その詳細はテロ研究の専門誌に先月報告され、仏紙ルモンドなどが1面で伝えていた。
同紙によると、ハッザニ容疑者はこの報道をきっかけに先週から自供を始めたとみられる。
情報筋が本人の供述内容として語ったところによると、同容疑者は昨年5月にシリアで6日間訓練を受け、欧州へ戻って攻撃を仕掛けるよう言い渡された。
トルコ国境へ連れて行かれ、同国からアルバニア行きの便に乗ろうとしたが、身分証明書類の不備で2回にわたり拒否された。シリアのISIS本部からは、アルジェリア人の「ビラル・C」という若いメンバーがギリシャからバルカン半島を通る難民ルートを調べるまで待てと指示された。
さらに「同胞」としてアバウド容疑者がトルコへ送り込まれ、2人は難民ルートをたどってハンガリーに入国。その後別々にベルギーの首都ブリュッセルへ向かい、アパートに滞在した。先にハンガリー入りしていたビラル・C容疑者も合流した。
ハッザニ容疑者とビラル・C容疑者はアバウド容疑者を通して作戦実行の指示を受けたが、ビラル・C容疑者は直前に逃走したという。同容疑者は今年7月、テロ組織を支援した疑いでドイツ当局に逮捕された。
ハッザニ容疑者は事件の数日前に、アバウド容疑者からタリスが標的だと知らされた。「一等車に乗ってくる3~5人の米国人」を襲うよう指示されたと話しているが、アバウド容疑者が事前にそのような情報をつかんでいたとは考えにくい。同容疑者はパリ同時テロの後、仏当局の突入作戦で死亡している。
ISISのメンバーは取り調べに対し、自分にとって都合の良い方向に話を作り変える傾向があり、捜査当局を悩ませるケースが多いとされる。