地下100メートルの北朝鮮――女性写真家が見た「世界で最も謎めいた地下鉄」

平壌の地下鉄駅。シャンデリアやレリーフなどの豪華な内装に圧倒される

2016.12.31 Sat posted at 17:47 JST

(CNN) 地下100メートルにある平壌地下鉄は、世界で最も深い地下鉄の1つであり、世界で最も謎めいた地下鉄の1つでもある。

朝鮮民主主義人民共和国を訪れる旅行者の数は毎年数千人ほどだ。特定のツアーを通してしか入国できず、旅程はツアーガイドが厳格に管理し、特定の地域への立ち入りが厳しく禁じられている。そのため外からは、なかなか北朝鮮の日常生活をうかがい知ることができない。

しかし、女性写真家エレイン・リー氏(25)が今年10月に北朝鮮を初めて訪れた際に最も強く感じたのは親近感だった。

香港で生まれ育ち、都会生活になじみのあるリー氏の写真は、超高層ビルや交通渋滞、面白い通勤風景の写真がほとんどで、インスタグラムでは13万3000人以上のフォロワーを抱える。

リー氏は北朝鮮滞在中、学校やレストランのほか、都市の象徴的な建造物なども訪れたが、同氏が最も親近感を覚えたのは地下鉄での出来事だった。リー氏はCNN Styleのインタビューで、その時の体験を語った。

CNN:平壌地下鉄の第一印象はいかがでしたか。

エレイン・リー氏:まず気付いたのは、どの駅も薄暗いのに、装飾が大変豪華ということです。天井にはシャンデリアがあり、柱は大理石で、故金正日(キムジョンイル)総書記の肖像画が数多く飾られています。

ホームに設置されたスタンドで新聞を読む人々

次に気付いたのは、ホームの至る所に設置されている新聞のスタンドです。スタンドの周りには人々が集まって新聞を読んでいます。

これは私にとって大変興味深い経験でした。香港のような国際都市では広告の多さに圧倒されますが、平壌ではプロパガンダの多さに圧倒されます。

地下鉄の写真を撮っている時に何か制約はありましたか。

大抵、電車内や駅での写真撮影許可は問題なく取れました。ツアーガイドが常に同行しましたが、駅のホームでは自由に歩き回ることができました。

ただ地下鉄に関しては2、3駅ほどの区間しか乗車が許されず、また特定の駅でしか降りられませんでした。

唯一禁止されたのはトンネル内からの写真撮影です。理由は分かりません。

勤務中の女性車掌

地下鉄の乗り心地はいかがでしたか。

まず気付いたのは、車内がとても静かということです。楽しそうな雰囲気は皆無で(誰一人会話をしておらず)、やや活気を欠いているという言い方もできるかもしれません。

しかし香港に戻って地下鉄に乗ると、ここでも乗客の間に会話がないことに気付きました。香港の電車はもっとうるさいですし、一見活気もありますが、乗客らに会話はありません。皆、スマートフォンに夢中になっています。平壌でもスマートフォンをいじっている人はいましたが、その数ははるかに少ないです。

では彼らは何をしているのかというと、周囲をきょろきょろ見回しています。まるで何かにおびえているようにも見えました。しかし、互いに会話をするわけではありません。北朝鮮の通勤風景は、ある意味、アジアの他の多くの都市の通勤風景と大変似ていると感じました。

地下鉄の乗客との交流はありましたか。

ある時、私は電車に乗り遅れそうになりました。ツアーの他の参加者はすでに電車に乗っていたのですが、私が女性車掌の写真を撮っている間に電車の扉がバタンと閉まってしまったのです。

すると私が写真を撮っていた車掌が運転手に向かって笛を吹きました。扉を開けて私を乗せるようにとの合図です。

乗客はほとんど会話をしないが、ささいな交流から人間味を感じる機会もあったという

また、ある年配の男性ともやりとりがありました。私は彼に席を譲ろうと思い、彼の肩を軽くたたきました。しかし、その男性は最初、肩をたたかれた意味が分かりませんでした。そこで別の女性がその男性に、私が席を譲ろうとしていると伝えてくれました。

これらの現地の人々との交流は間違いなく、この旅の中で最も興味深い経験でした。ごくささいな交流でしたが、大変人間味を感じました。住んでいる国は違っても、われわれは皆、お年寄りの世話をするといった共通の人間的関心を持っているのだと改めて感じました。

写真を見た方々の反応はいかがですか。

反応は様々です。どれも目を見張るような写真で、普段見られない北朝鮮の一面が垣間見えたと言ってくれる人もいれば、そもそもなぜ北朝鮮なんかに行ったのかと尋ね、私の写真はプロパガンダで、私が北朝鮮の支援を受けていると言う人もいます。

これまで寄せられたコメントには、人々が(北朝鮮に対して)抱いている先入観がはっきりと反映されています。しかし私がしたかったことは、目の前にある物を写真に記録し、自分の体験を可能な限り率直に伝えることです。

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