(CNN) 旅客機の現役の操縦士多数が臨床的なうつ状態にありながら、操縦士として勤務できなくなることを恐れて治療を受けていない――。米ハーバード大学の研究チームがそんな調査結果をこのほど発表した。
この調査は14日の環境衛生学会誌に掲載された。研究チームは2015年4~12月にかけて操縦士約3500人を対象に、インターネットを通じて匿名でアンケートを行った。
その1年半前に起きた独ジャーマンウィングス機の墜落事故では、副操縦士がうつ状態にあって、同機を故意に墜落させたとみられている。
今回の調査の目的は操縦士の精神衛生状態を調べることだったが、回答者にはそれが分からないよう、アンケートでは幅広いテーマについて尋ね、その中に医師がうつ病の診断に使う一般的な質問を盛り込んだ。
協力した操縦士約3500人のうち、精神衛生についての項目に回答したのは1848人。そのうち12.6%に当たる233人がうつ病の診断基準に合致していた。過去7日以内に勤務したという1430人に限ると、193人(13.5%)がうつ病と診断できる状態だった。
これと比較して、米国で過去1年の間にうつを経験した人は7%にとどまる。
過去2週間の間に自殺を考えたことがあると答えた操縦士は75人(4.1%)に上った。
特にいじめや嫌がらせを経験している操縦士はうつの症状が見られる割合が高く、過去1週間で4回以上の性的嫌がらせを受けたという操縦士は36.4%、過去1週間で4回以上の言葉によるいじめを受けたという操縦士は42.9%がうつ状態にあった。睡眠補助薬を使っている操縦士もうつの割合が高かった。
これまでの操縦士の精神衛生状態に関する情報は、ほとんどが事故調査や報告などに基づいていた。今回の調査はそうした問題について詳しい実態を調べることを目的としているが、調査対象者の面談を実施していないことなどに疑問を投げかける専門家もいる。
それでも研究チームでは、「航空機の操縦士は精神疾患に対する偏見や、地上勤務に配置されたり操縦士として不適格とみなされたりすることを恐れ、精神衛生症状や診断結果を過少報告している可能性がある」と指摘している。