アレッポ住民20万人の窮状、脱出経路なく空爆と飢えに直面

激しい空爆の続くアレッポ東部から住民が脱出を図っている

2016.12.08 Thu posted at 15:49 JST

シリア・アレッポ(CNN) シリア内戦の激戦地となっている北部の都市アレッポ。同地は反体制派が4年以上にわたって支配していたが、ここ数日で政府軍が激しい空爆を行うなど攻勢を強め、7日には市内東部の大半の地区を制圧した。

縮小を続ける反体制派の支配地域にはまだ大勢の市民が残り、安全に脱出できるルートがない中で食料や燃料、医薬品がほぼ底を突いて窮状に追い込まれている。

アレッポ東部の活動家によれば、反体制派の支配する10地区には活動家やその家族など20万人あまりが残る。銃弾が飛び交う中を他の地区から避難してきた住民もいるという。

今も運営を続ける数少ない病院は負傷した市民で満杯になり、医薬品はなく設備も整わない状況で「大量殺戮現場」のような様相だと活動家は話す。

攻勢をかけたシリア政府軍が、アレッポ東部の大半を反体制派から奪還した

7日朝にはスーツケースやビニール袋に身の回り品を詰め込んだ数百人の住民が、疲れ切った様子で、アレッポ東部から西部へ向かうバス待ちの行列をつくっていた。CNNの取材に応じた数人は、飢えや空爆の恐怖に見舞われ続けた惨状を振り返った。

親族8人とともに移動中の60代の男性は「配給される量のパンでは家族を養うことができなかった。食料が不足したため私は目が見えにくくなった」と語る。一家は2人につきパン1斤が3日ごとに支給されただけだったといい、息子の1人は空爆による破片を浴びた。しかしそれよりも、このままアレッポ東部にとどまって一家が餓死することの方を危惧したという。

CNN取材班は、シリア軍が奪還した地域から兵士が高齢者など弱者を連れ出す現場も目撃した。生後わずか7日という乳児を連れた一家や、高齢の女性が乗った車椅子を押す男性もいた。

ユニセフは7日、この10日間で約3万1500人がアレッポ東部から避難したと発表した。推定では約半分が子どもだったとしている。

カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の首脳は7日に発表した共同声明で「即時停戦」を促し、シリア政府とロシアによるアレッポでの行動を非難した。国連に対しては「戦争犯罪」を犯した者の罪を問うよう呼びかけ、「政治的解決のみがシリア国民に平和をもたらすことができる」と強調している。

アレッポ東部には物資の不足に苦しむ住民20万人あまりが取り残されているとみられる

アレッポ東部に残る市民の正確な数は不明だが、同声明では子どもを含む20万人あまりが食料や医薬品などの供給から切り離されていると指摘した。

激しい爆撃が続く反体制派の支配地域に今も家族と共に残る男性は、携帯メールを通じてCNNの取材に答え、「飛行機の音で目を覚まし、寒さに震え、朝食になる食べ物もなく、きれいな飲料水もない。家族は苦痛と恐怖にさらされている」と証言。多くの人が「埋葬してもらえるあてもないまま死んでいく」と語った。

家族を連れて脱出しないのかという問いには、「どこへ? 政権の支配地域へか? 死んだ方がずっとましだ。自分の兄弟姉妹や子どもたちを殺した相手のところへ戻れというのか」と憤る。

男性の妻は母乳が出なくなり、生後9カ月の娘はお腹を空かして泣き続けているという。娘にはつぶした米飯や紅茶に浸したパンを食べさせていると男性は語った。

アレッポ東部の活動家によると、激しい砲撃や空爆は7日も続き、やむ気配はない。同地の反体制派は5日間の人道停戦を呼びかけ、アレッポからの避難を望む住民は北部へ脱出させるよう求めた。

CNN記者、アレッポの激戦地を歩く

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