(CNN) カナダのトルドー首相が、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長の死去を受け発表した追悼声明をめぐって厳しい批判にさらされている。カストロ氏を「偉大な指導者」とたたえるその内容が、同氏によるキューバでの人権侵害や政治弾圧の過去を無視したものととらえられたためだ。
トルドー首相は26日の声明でカストロ氏の死去に対して「深い悲しみ」を表明。「フィデル・カストロ氏は偉大な指導者としてほぼ半世紀にわたりキューバ国民に奉仕してきた。伝説的な革命家、演説家であり、キューバの教育と医療の著しい改善を実現した」とその功績をたたえた。
その上で「評価の分かれる人物ではあるが、同氏の支持者も同氏に批判的な人たちも、キューバ国民に向けられたその計り知れない献身と愛情については認めていた」と語り、「キューバ国民とともに、この卓越した指導者の死を悼もう」と結んだ。
これに対し、米上院議員でキューバ移民を両親に持つマルコ・ルビオ氏はツイッターに「この声明は本物なのか、それともパロディーか?」と投稿。もし本当にカナダ首相による声明なのだとしたら恥ずべき内容だと続けた。
同じく米上院議員でキューバで生まれ育った父親を持つテッド・クルーズ氏も「みっともない話だ。なぜ若い社会主義者は全体主義の独裁者に心酔してしまうのか? カストロ、スターリン、毛沢東、ポル・ポト――彼らはみな邪悪で、人々を拷問にかけ続けた殺人者だ」とツイートした。
ソーシャルメディア上にはトルドー首相の声明を揶揄(やゆ)する目的から、イタリアの独裁者ムッソリーニや北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記、さらにはアニメや映画の悪役キャラクターを皮肉交じりに称賛する書き込みが相次いで寄せられた。
カナダはキューバと1945年から国交を結んでおり、59年のキューバ革命後も外交関係を維持した。キューバを訪れる外国人旅行客はカナダ人が最多で、両国間には通商、教育、文化の面でも交流がある。