米国の憎悪犯罪拡大、イスラム教徒絡みは67%激増 FBI

FBIの報告書によると米国で憎悪犯罪が増加している

2016.11.19 Sat posted at 18:18 JST

(CNN) 米連邦捜査局(FBI)は19日までに、ヘイトクライム(憎悪犯罪)に関する年間報告書をまとめ、2015年にはイスラム教徒に対する犯罪が計257件と、154件だった14年から67%の激増を示したと発表した。

昨年の総数は5850件で、前年比では6.8%増。昨年は5479件だった。ヘイトクライム問題に詳しい公民権運動組織「南部貧困法律センター」によると、イスラム教徒が巻き込まれた件数は同時多発テロが発生した2001年の481件以降では最多となった。

ユダヤ教徒に対する犯罪も前年比で9%増の664件だった。

FBIの今回の報告書は、米大統領選に絡み全米規模で宗教や人種に基づいた嫌がらせ行為の増加が指摘される中で発表された。南部貧困法律センターは米国内で活動するヘイトクライムに絡む892グループの動向を追跡している。同センターによると、11月8日の米大統領選投票日以降に米国内で発生した憎悪犯罪関連の嫌がらせや脅迫は300件記録した。

大統領選で当選したドナルド・トランプ氏は選挙戦などで外国人排斥やイスラム恐怖症をあおる発言をしたとして非難されていた。これらの言動がヘイトクライムの実行犯をそそのかしたとも批判されている。

トランプ氏は最近、大統領選当選後、初めて米テレビ局との会見に応じ、支持者に対し少数派への迷惑行為をやめるよう呼び掛けていた。CBSテレビの番組で、これらの嫌がらせ行為の情報には非常に悲しくなるとも述べていた。

FBIはヘイトクライムを人種、宗教、身体障害、性的指向、民族、性別や性的な同一性への偏見などに基づく犯罪と規定。米国の法的執行機関は毎年、これらの犯罪件数をまとめて提出している。犯罪の種類、被害者、加害者や犯罪の現場などの詳しい情報が含まれる。

今回の報告書によると、発生件数の59.2%は人種や民族的な背景要因が動機となった。19.7%は宗教、17.7%が性的指向で、3.3%が性的な同一性、身体障害や性別が原因となっていた。

イスラム教徒を除く少数派への犯罪も増えていた。アフリカ系(黒人)が被害となった件数は約8%、LGBT(性的少数者)は約5%それぞれ増加。ヒスパニック系はほぼ変わりなかった。

米国のイスラム教徒団体「米国イスラム関係評議会」は今回のヘイトクライム報告書に憂慮を表明。「昨年はイスラム教徒への嫌がらせ行為などが激増し、今年は終始、イスラム恐怖症に絡む出来事が続いている。米大統領選投票日の後には加速している」と指摘した。

同団体の暫定データによると、今年起きたモスク(イスラム教礼拝所)への攻撃は過去に2番目に多い記録に迫りそうな様相となっている。最悪記録は昨年の計78件だったという。

大統領選後の差別や偏見行為、米国各地で

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