先進国のテロ犠牲者、前年比650%の増加 世界テロ指数

2105年にはパリ同時多発テロも起きた

2016.11.17 Thu posted at 10:51 JST

ロンドン(CNN) 豪シンクタンク、経済平和研究所(IEP)は17日までに、2016年版の「世界テロ指数(GTI)」を発表し、昨年1年間に世界で報告されたテロによる死者は前年から10%減少したものの、先進諸国での死者数は650%の増加を記録したと明らかにした。

昨年テロで死亡した人は世界で2万9376人。米国、英国、ドイツ、フランス、トルコなど経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進国での死者は731人と、14年から大幅に増加した。トルコとフランスでの犠牲者が大半を占めた。OECDの34カ国中、21カ国で少なくとも1件のテロが発生した。

130人の死者が出たパリ同時多発テロの現場のひとつ、バタクラン劇場は、テロからほぼ1年が過ぎた12日に営業を再開している。

昨年1年間で特に大きなテロ被害を受けたのはイラク、ナイジェリア、アフガニスタン、シリア、パキスタン。この5カ国で死者の72%を占めた。

イラクとナイジェリアでは過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」や「ボコ・ハラム」に対する軍事作戦が功を奏し、犠牲者の数が減少した。だが一方で、ISISとボコ・ハラムは近隣の国や地域に勢力を広げている。

昨年はイラクもテロにより大きな被害を受けた

世界経済が昨年、テロによってこうむった損失は896億ドル(約9兆8000億円)相当に上った。

IEPのスティーブ・キレリー会長は「全体の死者数が減少したのは良いことだが、テロが一部の国で激化していること、新たな国へ拡大していることが重大な懸念材料だ」と述べた。ISISの活動範囲となっている国は、14年の13カ国から28カ国に急増している。

キレリー氏はまた、テロが欧米民主主義の牙城でも発生していることに言及し、テロ組織の変化に応じた迅速な対応が必要だと指摘した。

IEPの報告書は、OECD諸国でのテロに大きくかかわる要因として、若者の失業や高い犯罪発生率、武器を容易に入手できる環境、選挙制度への不信感を挙げている。

キレリー氏は、イラクでISISに対する軍事作戦が成果を挙げていることを認める一方、欧州でのテロ続発にみられる通り、ISISに感化される人が後を絶たない現状が問題だと強調。軍事的手段のみのアプローチには限界があるとの見方を示した。

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