パリ同時テロから1年、癒えぬ悲しみと怒り 今も続く厳戒

パリ同時テロの襲撃現場の1つとなったコンサートホール「バタクラン」

2016.11.14 Mon posted at 10:30 JST

パリ(CNN) 130人が死亡したフランスのパリ同時テロから1年がたった13日、市内各地で犠牲者をしのび、平和を祈る式典が営まれた。

1年前の11月13日、娘のローラさん(当時29)を亡くしたジョルジュ・サリンさんは、あの日を境に人生が一変した。ローラさんがいたコンサートホール「バタクラン」では過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」につながる武装集団が銃を乱射して自爆。必死で娘を探し回った家族は、ソーシャルメディアを通じて悲報を知った。「娘は苦しむことも、死を予期することもなかったと思いたい」と父親はつぶやく。

オランド大統領は同ホールや事件現場となったレストランやカフェで慰霊碑を除幕した。バタクランでは犠牲者90人全員の名が読み上げられた。

バタクランは12日、事件から1年ぶりに営業を再開。英歌手スティングさんが公演を行って犠牲者のための募金を呼びかけ、「彼らのことを忘れてはならない」と訴えた。

バルス首相は13日、事件直後に発令した非常事態宣言が延長される見通しを明らかにした。4月から5月にかけての大統領選挙を控え、「民主主義を守る」ためには政府が強い権限を維持する必要があると説明している。

事件以来、犠牲者追悼と国の結束を象徴する場となっていたレピュブリック広場にはこの日、紅葉に彩られて次々に花束が供えられた。空には風船が飛ばされ、日が暮れると現場近くのサンマルタン運河に何千もの灯籠(とうろう)が浮かべられた。

バタクランへの襲撃で29歳の娘ローラさんを亡くしたジョルジュ・サリンさん

ソーシャルメディアのキャンペーンでは、自宅の窓辺にろうそくをともして市内を照らし、「未来を輝かせよう」と呼びかけている。

テロがフランスに残した傷は今も癒えない。12人が死亡した昨年1月の風刺週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件以来、市内で警戒に当たる警官や兵士が増員され、主要観光地や学校、官公庁、宗教施設周辺は武装した警官らが巡回する。

それでも11月の同時テロは阻止できず、今年に入ってニースやルーアンでもテロが続発。国民の憎悪はイスラム教徒へと向かい、国家人権委員会(CNCDH)によれば、フランス国内で2015年にイスラム教徒が暴行されたり脅迫されたりした事件は前年比223%増の429件に上った。

相次ぐテロは観光業にも打撃を与えている。外国からの訪問者数はここ1年で前年より約200万人減り、今年に入って8.1%減少した。

「悲しみは決して終わらない。生涯にわたって痛みが続くだろう。それでも最初の頃のように、1日3回も泣き崩れることはなくなった」

そう語るサリンさんは、遺族や被害者を支える団体の会長としての活動に力を入れる。「記憶は持ち続けなければならない。だが恐怖に足を取られていてはいけない。生き続けなければならない」と力を込めた。

パリ同時テロから1年、犠牲者を追悼

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