(CNN) 燃え盛る戦火のただなかで、がらんとした狭いアパートに暮らす家族の現実を見てほしい――。ノルウェーの首都オスロ郊外にある家具販売大手イケアの店舗に、シリアの住まいを再現したコーナーが設けられた。
展示されているのは、コンクリートの壁がむき出しになったわずか25平方メートルの部屋。ノルウェー赤十字のチームがイケアと共同で取り組んでいる募金キャンペーンの一環だ。
シリアの首都ダマスカスで4人の子どもを育てる女性、ラナさんの住まいを再現した。ラナさんは現地を訪れた赤十字のチームに、「安全を求めてこの地区へ移ってきたが、手持ちのお金でこれ以上の部屋は借りられなかった。マットレスや毛布、子どもたちの服を買うお金もない」と語った。
ラナさんは家族を守るために教師の仕事を辞めた。一家はシリア・アラブ赤新月社から配給される食料パックだけで生き延びている。ほかの地区よりは安全とされる住まいだが、建物は未完成で冬支度もできていない。
キャンペーンの企画を担当した広告会社のクリエーター、マヤ・フォルゲロ氏はCNNとのインタビューでシリアへの旅を振り返り、「実際の紛争地域を訪ねた経験には、それまで見たどんな映像もかなわなかった」と語った。
実在の部屋だということを感じてもらうために、手軽な壁紙でなく本物のコンクリートを使った。紛争地域の出身者からは「まさにこの通りだ」と声を掛けられたという。
この店舗には先月、展示を見るためだけに訪れた客も多かった。毎週約4万人が展示コーナーに立ち寄り、赤十字のシリア支援キャンペーンには2200万ユーロ(約25億3000万円)の募金が寄せられた。