(CNN) イラク軍は過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に支配された北部モスルの奪還を目指し、クルド人部隊「ペシュメルガ」とともに市東部で攻勢を仕掛けている。ISISの激しい抵抗を受け、今後さらに厳しい戦いが続くとみられる。
アバディ首相は先月17日の作戦開始に当たり、長期戦となる恐れがあるとの警告を発していた。近郊から進軍を続けていたイラク軍は、3日にモスル市内に入った。
現地では4日から5日にかけて、イラク軍特殊部隊に同行していたCNNの上級特派員と報道カメラマンが大規模な戦闘に巻き込まれ、一時的に立ち往生した。
3万人規模のイラク軍部隊には、中部ファルージャや西部ラマディの奪還作戦に参加した精鋭部隊のメンバーも含まれている。しかしかつてほどの強さはなく、能力は部隊によってばらつきがある。
市街戦では通信能力の不備も大きな問題となる。ある部隊の報道担当者によると、戦場に出ている大半の部隊は本部と直接連絡が取れない状態だという。
ISISはモスルを制圧した2年前から防御態勢を固めてきた。地形を熟知したうえでトンネルを張り巡らせ、建物に爆弾を仕掛けるなどして徹底抗戦を図る。
米軍当局者の推定によると、モスル市内に展開するISIS戦闘員は3000~5000人。さらに市境界の外側で1500~2000人が待機しているとみられる。
広い場所で交戦して空爆の標的になる事態を避けるため、人口密集地でイラク軍を待ち受けて攻撃を仕掛ける。
市民を「人間の盾」として使う作戦で攻撃をかわす。死を覚悟した戦闘員らが建物の陰から軍車両の目の前に飛び出し、ロケット弾を撃ってくる。市東部一帯にはISISが爆弾を仕掛けた車も点在している。
モスルはイスラム教スンニ派のアラブ人が多数を占める都市だが、イラク軍側の部隊はイスラム教シーア派が中心。同市を訪れたことさえない兵士がほとんどだ。
4日には東部のある地区で15台の車列が待ち伏せ攻撃に遭い、三方から銃撃を受けた。地区を通過することができたのは3台だけだった。
派遣された援軍は約2キロの距離を進むのに8時間かかった末、やはり待ち伏せ攻撃を受けて立ち往生した。5日午前にはさらに30台の車列が駆け付けたがロケット弾や迫撃砲にさらされ、1人が死亡、20人が負傷した。
市の中心部が近づくにつれ、戦闘はさらに激しくなることが予想される。市内から着の身着のままで逃げ出した住民が連日、数千人単位で避難キャンプへ流れ込んでいる。
モスル市街戦、現場からの報告