「イスラム冒涜」発言、ジャカルタ知事辞任求めるデモ 91人負傷

警官隊は大統領官邸近くでデモ隊を退けようと催涙ガスや放水銃を使用

2016.11.05 Sat posted at 16:15 JST

(CNN) 世界最多のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアの首都ジャカルタで4日、イスラム教を冒涜(ぼうとく)する発言を示したとしてジャカルタ特別州のバスキ・チャハヤ・プルナマ知事の辞任を求める大規模なデモ行進が起きた。

地元テレビ局CNNインドネシアによると、大統領官邸近くでデモ隊と警官隊が衝突、少なくとも91人が負傷した。警察が催涙弾と放水銃で規制を試みた際、数十人のデモ参加者が警官隊を襲ったという。

地元警察の発表では、デモの参加者は推定20万人。参加者は「知事を殺害しろ」「死刑執行を」など過激なスローガンも唱和したという。参加者の多くは身元を隠すためか覆面姿で行進した。行進の大半は平和裏に進んだという。

衝突の発生後、ジョコ大統領は記者会見を開き、同知事に対し法的な措置を講じることを約束。その上でデモ参加者らに秩序を守って帰宅するよう促した。また、国民に平静さを呼び掛け、来年の大統領選の対立候補に事態を沈静化させる上での協力も求めた。

イスティクラル・モスクから大統領官邸までデモ行進をする人々

バスキ氏による問題発言は来年予定の知事選の選挙戦演説で、対立候補がイスラム教の聖典「コーラン」の文章を引用したことを批判したもの。このビデオ映像が今年10月にインターネット上に流れるとイスラム教保守派や宗教界から広範な反発を受けていた。同時にジョコ大統領が過激派を刺激させないための方途を講じなかったことへの失政への批判も出ていた。

同国のイスラム教保守派は同知事がイスラム教徒が多数派の都市の行政責任者になるべきではないと主張。これまでも集会でコーランの一節などを紹介し、イスラム教徒に対し無信仰な人物と手を組むべきではないとも警告してきた。バスキ知事は少数派の中国系となっている。

不測の事態発生を恐れ治安当局は最大1万8000人の警官や軍兵士を動員してデモ行進を警備。知事の居宅周辺には約100人の武装警備員も配置された。警察は、抗議行動と言論の自由を平和的な方法で行使するようデモ参加者に要請。住民に対してはデモ行進のコースに近づかず、ソーシャルメディア上に流れる挑発的な情報に惑わされないことを呼び掛けた。

デモはジャカルタ中心部にある「イスティクラル・モスク(イスラム教礼拝所)」から始まり、大統領官邸までのルートで実施された。英国、オーストラリア両国政府はデモに伴い、自国民に注意を促した。

ジョコ大統領(右)と握手するバスキ氏

バスキ氏は、ジョコ大統領がジャカルタ特別州知事を務めていた際の副知事。来年の知事選では当選が有力視されていた。知事選にはスシロ・バンバン・ユドヨノ前大統領の息子も立候補しているが、前大統領は最近の演説で、今回の問題発言を受けイスラム教徒の反対勢力をなだめ抗議行動を沈静化させるためバスキを訴追するよう要求してもいた。

インドネシア国内にはジェマア・イスラミヤ(JI)などのイスラム過激派が存在している。過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」やアルカイダはJIを通じ国内に暴力をはびこらせる工作を仕掛けるのではないかとの懸念がくすぶっている。今回のデモ行進に伴い、ソーシャルメディア上の聖戦主義者のアカウントが支持者に対しインドネシア内に聖戦の炎を拡散させるようけしかけたとの指摘も出ている。

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