イラク・モスル近郊(CNN) 過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に占拠された北部の都市モスルにイラク軍が入った3日、同市や周辺の集落からは大量の避難民が脱出した。
国際移住機関(IOM)によると、モスル奪還作戦が始まった10月17日以来の避難民は約1万8000人。モスルにはまだ150万人の住民が残っていると推定され、市街戦が始まった今、さらに多くの避難民の発生が予想される。
イラク国防相によると、モスルに入ったイラク軍は市民のための避難経路を確保した。CNNの取材陣は、何百人もの市民がISISの爆弾や銃撃戦をよけながら、徒歩でモスルを離れる様子を目撃した。多くは民間人であることを示す白い旗を振っていた。
イラク軍は、道路脇に集まっていた人たちをトラックやバスに乗せて避難民キャンプに送り届けている。
車いすに乗った高齢の女性は、夜通し続いた戦闘のために一晩中眠れなかったといい、「自分たちの車は持って来られなかったので、ずっと歩き続けてきた」と語った。
女性に付き添っていた若い男性は、自宅前にISISが路上爆弾を仕掛け、屋根の上には狙撃手がいたと話している。
別の女性は、ISISが逃げようとする市民を銃撃していると証言し、幼い娘を抱きしめた。
避難民の多くはISISの支配から解放されたモスル東部や周辺の集落から来た住民で、ISISが同地を制圧した2014年以来、脱出できなくなっていたと話す。
避難民キャンプでは援助団体の職員がマットや食事を配っていた。中には家族を皆殺しにされたという幼い少年の姿も。しかし本人は自分たちの身に起きたことを語らず、ただ援助団体のテントから離れようとしなかった。
避難民の中にISISのメンバーが紛れ込んでいるかもしれないという懸念から、同キャンプに3日到着した男性は、それまでに到着していた女性や子どもとは金網のフェンスで隔てられた。
2014年6月以来、離れ離れになっていた妻と再会を果たした男性もいた。妻はフェンス越しに夫の手を握ってキスを繰り返し、男性の息子は娘を抱き上げて初めて会う祖父に見せていた。
何人もの大人の男性がフェンスの前で、再会の喜びや家族を失った悲しみに涙を流した。
同キャンプに収容できるのは1万1000世帯が限界だといい、急速に満員状態に近づきつつある。「最悪の事態はこれから」と援助団体職員は話している。
モスル脱出、避難民キャンプに集まる人々