イラク北部アルファズリヤ(CNN) 道の向かい側にあるもう1軒の理髪店にも、「シハブ」さんと名乗る若い男性がひげをそりに来ていた。まだISISが怖くてフルネームは明かせないという。
シハブさんは「ISISの下では何をするにも許可が必要だった」と話し、これが2年ぶりのひげそりだとはにかんだ笑顔を見せた。巧妙な支配体制を敷いていたISISだが、「出ていった瞬間から普通の感覚が戻ってきた」という。
理髪店の前の看板には、さっぱりと髪を刈ってほほ笑む男の子と若者が描かれている。ISISは「非イスラム的」な髪型だとしてその顔にテープを張り付けたが、今はそれもはがされた。
何軒か先の店では、入荷したばかりのたばこが盛んに売れていた。店の外で楽しげにたばこを吸う人々。ISISが犯罪として禁止した喫煙も、今や自由の象徴だ。
オリーブ農家を営むマフムード・アッバスさんは「こうして外でたばこを吸うと、自由な気持ちでいっぱいになる」「この2年間は黒い雲が垂れ込めているようだった」と話す。
アルファズリヤはモスル周辺によくあるほこりっぽい町だが、その大通りはたくさんの人でにぎわっていた。
女性の姿はほとんど見かけなかったものの、男性たちは1週間前ならむち打ちの刑になっていたような服装で路上に集まり、会話に花を咲かせていた。
ある若者は匿名ながら、自慢げに服装を披露した。リーボックのジャケットにストーンウォッシュのジーンズ、そして革のサンダル。「1週間前にこれを着ていたら、モスルへ連れて行かれてむち打ちと罰金の刑を受けただろう」と語り、うれしさを隠しきれない表情で「ぼくらは死んでいたが、今はまた生きている。ペシュメルガが来て生き返ることができた。神様が救ってくださったのだ」と力を込めた。
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次回「ISISがいなくなった町で<3> 支配の傷跡は今も」は11月6日公開
理髪店が大忙し、ISISから解放された町