中国のサイバー攻撃<2> アジアでの情報収集に軸足

サイバー攻撃の標的はアジアの周辺国に移りつつある

2016.12.31 Sat posted at 09:00 JST

香港(CNN) 中国のサイバー空間でのスパイ活動は、米国の商業機密を盗むことから、地政学的な緊張をはらむアジアでの情報収集を進める方向に軸足を移しつつある。

例えば、台湾だ。台湾の総統選で民進党の蔡英文(ツァイインウェン)氏が大勝して以来、中台関係は緊張が高まっている。民進党は中国からの独立志向が伝統的に強い。その民進党のウェブサイトが選挙後に攻撃を受け、訪問者に関するデータを収集するための偽のサイトが設置された。

香港に対する攻撃もみられる。香港の民主化を求める雨傘運動が2年前に発生して以来初となった先の立法会(議会)選挙では、独立を求める運動が少数ながら存在感を発揮した。選挙前の時期には、香港の2つの行政組織が新種のマルウエア(悪意のあるソフト)を使ったサイバー攻撃の標的となった。

サイバーセキュリティー会社ファイア・アイによれば、いずれも中国の国家的な支援を受けたハッカーによる攻撃とみられる。

ファイア・アイのアジア太平洋地域最高技術責任者(CTO)を務めるボーランド氏は、こうした攻撃の背後には明らかに政治的な動機があると指摘。「論理的な帰結として唯一考えられるのは、政治的な活動を行っている人々により攻撃が組織されているという点であり、そのため我々は、国家が関与したサイバー攻撃とみている」と述べる。

ただ、中国を起点にするサイバー攻撃のすべてが当局の承認を受けているわけではなさそうだ。

南シナ海では領有権をめぐる紛争も

南シナ海での領有権争いをめぐり、中国は当該地域に対する歴史的権利を有していないとする判断を国際仲裁裁判所が示した後、ベトナムの主要な2つ空港で運航情報を表示するスクリーンがハッキングされた。フィリピンとベトナムが南シナ海で領有権を主張していることに関し、批判的な内容のメッセージを表示させるためだった。

この件に関して、カーネギー清華グローバル政策センターの趙通氏は中国の国家機関による攻撃ではないとの見方を示す。「かつての想定では、中国の政治体制は中央集権化が著しく、中央政府がすべてをコントロールしているに違いないとみられていた。だが、こうした想定は不正確だ」と述べる。

趙氏は見立ては正しそうだ。どれほど強力であったとしても、中国は一枚岩ではない。その体制は巨大で、軍民を問わずさまざまな組織が動いている。

ただ、サイバー攻撃に関与する多くの組織が結集して、情報化時代における中国の安全保障上の利益や立場を推進するという共通の目的のために力を合わせることはあり得そうだ。

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