第3回TV討論会、最後の直接対決から見えた5つのポイント

最後となる討論会が開催された

2016.10.20 Thu posted at 19:51 JST

(CNN) 11月の米大統領選に向けた3回目で最後となる討論会がラスベガスで開催され、共和党候補のドナルド・トランプ氏と民主党候補のヒラリー・クリントン氏が激論を交わした。

トランプ氏はクリントン氏に対していくつか攻撃を浴びせ、3度の討論会でも最高のパフォーマンスを見せつつあった。

しかし、トランプ氏は選挙結果を受け入れると名言することを拒んだ。そして、クリントン氏を「なんて嫌な女」と呼んだ。

トランプ氏は、全国放送を通じて、女性や穏健派、不満を示している共和党員といった有権者からの支持を広げるという最後にして最大の機会を台無しにした。こうした有権者からの支持が得られず、トランプ氏は世論調査でクリントン氏にリードを許している。

以下では第3回討論会のポイントを5つ挙げる。

トランプ氏は選挙結果の受け入れを明言せず

投票の完全性は米民主主義の根源だ。そして、今回の討論会では、トランプ氏はそれをもてあそんだ。

司会者から選挙結果を受け入れるか尋ねられると、トランプ氏は「その時に考える」と答えた。この回答は衝撃的で、討論会後の報道で大きく取り上げられた発言のひとつとなった。

トランプ氏は「不正操作」という言葉を繰り返し使い、メディアの偏向や米連邦捜査局(FBI)がクリントン氏を私用メールサーバーの利用で起訴しなかったことなどを嘆いた。

選挙結果の受け入れについて再度聞かれると、トランプ氏は「あなたたちをはらはらさせておく」と答えた。クリントン氏は「恐ろしい」と切り返した。

トランプ氏は選挙結果を受け入れるとは明言しなかった

これは、今夜の討論会で最大の瞬間だった。もしかしたら、3回の討論会すべての中でも。選挙に敗北した場合、敗北を受け入れないというアイデアによって、トランプ氏は、クリントン氏追撃のための貴重な時間をこの問題に奪われることを許してしまった。

共和党員にはピンチ

トランプ氏は、11月に議会選を迎える共和党員たちをさらなるピンチに追い込んだようだ。

選挙まで3週間を切るなか、トランプ氏を擁護するのか、民主主義のプロセスの完全性を擁護するのか決断しなければならない。

共和党の議員は、副大統領候補でさえ目指さない場所をなぜトランプ氏が目指しているのか説明しなければならない。

共和党の副大統領候補マイク・ペンス氏は討論会の前、「我々は選挙結果を確かに受け入れるだろう」と述べていた。

トランプ氏の発言は、すでに同氏を拒絶している共和党議員たちから反発を受けた。グラハム上院議員(サウスカロライナ選出)はトランプ氏が共和党と米国に対し、大きな危害を加えていると指摘した。

トランプ氏支持を打ち出している保守系ラジオ番組の司会者ローラ・イングラハム氏でさえ、「トランプ氏は選挙結果を受け入れると発言すべきだった。再集計が必要な事態にでもならない限り、選挙結果を受け入れる以外の選択肢はない」と述べた。

トランプ氏にとって、保守的な人々が不機嫌になっても気にしないのかもしれない。しかし、大統領選本選に勝つのならば、共和党員が投票に足を運ぶ必要があり、議会の過半数を維持するためにも共和党は同じ有権者を必要としている。

「なんて嫌な女」

トランプ氏の最大の政治的課題は女性層で大きく後れを取っていることだ。しかし、討論会終盤のトランプ氏の発言は、そんな課題を抱えているとはとても思えないようなものだった。同氏はクリントン氏の発言中に割って入り、「なんて嫌な女だ」と言い放ったのだ。

討論会ではクリントン氏がうまく切り返す場面も

この発言で、トランプ氏は最も必要としている有権者を遠ざけてしまったかもしれない。トランプ氏は何度も「違う」と言い、クリントン氏が計画を提示すると「あなたにはできない」と指摘した。クリントン氏が発言に割って入ろうとすると、トランプ氏は手を挙げて、「すまない、私の番だ」と述べた。

餌につられるトランプ氏

討論会は当初、これまでのような選挙戦の様相を呈していた。2人の候補者は最高裁判事の指名をめぐり、それぞれの正義の形について議論した。トランプ氏は銃の権利を擁護し、クリントン氏は人工妊娠中絶の権利を支持した。

ウィキリークスが公開したメールをめぐり、トランプ氏がクリントン氏を見事に攻撃する場面もあった。

一方、クリントン氏もトランプ氏を攻撃し、以前と同じように成功を収めた。

クリントン氏は、トランプ氏がメキシコのペニャニエト大統領との会談で国境に築くとされる壁について言及しなかったと指摘。トランプ氏が自分の方がロシアのプーチン大統領とうまくやれると強調すると、クリントン氏は、トランプ氏がプーチン大統領の操り人形だと指摘した。

ここから、トランプ氏の足元がふらつき始め、すぐに大きな失敗を犯した。

CNNとORCの調査ではクリントン氏の勝利とした人の割合が過半数となった

トランプ氏はクリントン氏が30年にわたり問題解決を手助けできる位置にいたと指摘。「問題は、クリントン氏が何もしなかったことだ。何も」と述べた。

これに対し、クリントン氏は、「1970年代、私は児童防衛基金のためにはたらき、学校におけるアフリカ系米国人の人種差別に取り組んでいた。トランプ氏はアパートでの人種差別に関連して司法省から提訴された」と指摘。「1980年代、私はアーカンソー州で学校の改革を進めていた。トランプ氏は父親から1400万ドルを借りて事業を始めた。1990年代、私は北京を訪問し、女性の権利は人間の権利だと述べた。トランプ氏は元ミス・ユニバースのアリシア・マチャド氏を侮辱し、彼女を食べる機械だと述べた」などと切り返した。

CNNとORCの調査では討論会の勝者をクリントン氏とした人の割合は52%。トランプ氏が勝者だとした人の割合は39%だった。

トランプ氏の気質

世論調査によれば、有権者はトランプ氏の気質や指導者としての能力を信頼していないようだ。

今回の討論会でも、トランプ氏が能力ある指導者かどうか判断できそうな場面が訪れた。

トランプ氏は、化学兵器を使用したシリアのアサド大統領が米国の指導者よりも優秀だと指摘した。トランプ氏はアサド大統領が、クリントン氏やオバマ米大統領よりもはるかにタフではるかに頭がいいと述べた。

トランプ氏はまた、ロシアのプーチン大統領と距離を置くこともなかった。トランプ氏はプーチン氏について「親友ではない。しかし、もし米国がロシアとうまくやっていけるなら、そんなに悪いことではないだろう」と述べた。

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