「グレートバリアリーフ死去」、雑誌の死亡記事で物議

オーストラリアのグレートバリアリーフの訃報記事が掲載された

2016.10.17 Mon posted at 13:55 JST

(CNN) 「オーストラリアのグレートバリアリーフが2016年、長い闘病の末に死去した。2500万年の生涯だった」――。米アウトドア雑誌アウトサイドにそんな「死亡記事」が掲載され、読者や専門家の間に戸惑いや反論の声が広がっている。

グレートバリアリーフはユネスコの世界遺産に指定された世界最大のサンゴ礁。アウトサイドの記事はその生涯や生態系の中で果たした役割、世界的な名声を紹介し、サンゴの白化のために健康状態が悪化して、2016年に死亡したと結んでいる。

これについてサンゴ礁の生態系に詳しい米海洋大気局(NOAA)のラッセル・ブレイナード氏はハフィントンポストの取材に対し、記事の狙いは事態の深刻さを訴えることにあるようだが、文脈が分からない読者は「額面通りにグレートバリアリーフが死んだと受け止めてしまうだろう」と懸念を示した。

実際にソーシャルメディアでは誤った情報が広まっている。ツイッターにはグレートバリアリーフの死を悼み、この結末に目を向けて深刻に受け止めるよう促す投稿が掲載された。

死亡記事を執筆したのはグルメや環境問題を担当する記者で、科学者ではない。しかし一部メディアは科学者がグレートバリアリーフの死を宣告したと伝え、一層の誤解を招いた。

一方で誤解を解こうとする投稿も掲載されている。生態学的な持続可能性を追求する団体はツイッターへの投稿で「グレートバリアリーフは死にかけているが、死んではいない! まだ手遅れにはなっていない。あきらめてはいけない」と訴えた。

「白化」現象の影響で同リーフは絶滅の危機に瀕しているという

ただしグレートバリアリーフが深刻な状況にあることは誰にも否定できない。オーストラリア政府に学術研究上の助言を行う豪州研究評議会(ARC)に属するサンゴ礁研究所の調査によると、同リーフの93%は白化現象の影響を受け、リーフは絶滅の危機に瀕している。

それでもまだ希望はあるとクインズランド大学のジョン・パンドルフィ教授は言い、「今はリーフの復元力を強め、自然な回復力を最大限に高めることが決定的に重要だ」と指摘する。一方で、「リーフにかつてのような回復力はない。わずか18年の間に3度も白化に見舞われて苦しんでいる」との見方を示した。

アウトサイドの記事では、グレートバリアリーフが死亡した原因はオーストラリア政府にあるとする説を展開。政府が観光業への影響を懸念して国連に圧力をかけ、気候変動に関する報告書からグレートバリアリーフに関する内容を削除させたとしている。

オーストラリア政府とクインズランド州は9月28日、グレートバリアリーフ再生計画に関する初の年次報告書を発表し、20億豪ドル(約1580億円)を投じてリーフの健康状態改善を目指す計画は実を結びつつあると報告していた。計画に盛り込まれた151項目の行動のうち29項目は実現したとする一方で、成功を続けるためには回復に向けた取り組みを加速させる必要があるとも指摘している。

グレートバリアリーフには年間200万人以上が訪れる。政府や専門家や保護団体は、その美しさを今後何世代にもわたって楽しんでもらえるよう、保護活動に力を入れている。

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