(CNN) 米モンタナ州のマディソン郡でこのほど、ハイキングに来ていた男性が同じクマから2度にわたって襲撃を受ける出来事があった。男性は複数箇所に傷を負ったものの命に別条はなく、フェイスブックへの投稿で襲われた際の状況を詳しく説明している。
トッド・オアさんは今月1日の早朝、ヘラジカを見つけようとマディソン郡の原野にできた小道を歩いていた。広々とした草地に足を踏み入れた時、草地の向こう側からクマの親子がこちらを見ているのに気が付いた。オアさんはフェイスブック上の書き込みで「何度も大声を張り上げて、母グマに自分が人間であることを知らせようとした。引き返してくれるんじゃないかと思ったんだ。でもそううまくはいかなかった」とその時の様子を振り返った。
「母グマは2~3秒の間にすぐ近くまで迫ってきた。7~8メートルの距離からクマよけのスプレーを思いっきり吹き付けたが、ものすごい勢いで突っ込んできて、私の体にのしかかった」。その後クマは数分の間オアさんから離れず、腕や肩に嚙みついた。噛まれるたびに「歯のついた大型のハンマーを打ち込まれるような」衝撃を感じたという。
クマが襲撃を止めて立ち去ると、オアさんは血にまみれた傷だらけの体を起こして歩き始めた。5キロほど離れた場所に止めてきたトラックへ戻るためだ。「死なずに済んだことを神に感謝した。出血があまりひどくならないことを祈りながら、とにかく歩いてクマから距離を取ろうと思った」。
ところが災難はこれだけで終わらなかった。トラックに向かって歩き始めて10分ほどたったころ、物音がしたので振り返ると、さっきのクマがオアさんの背後にまたしても現れたのだ。「自分の後をずっとついてきたか、あるいは森の中を突っ切ってたまたま私の真後ろに飛び出してきたのか。いずれにせよ母グマはすぐまた私に襲いかかった。2度もこんな目に遭うなんて! なぜ私が? 1度目の襲撃では幸運にも生き延びられたが、今度は無理なのではないかという思いが頭をよぎった」。
オアさんに馬乗りになったクマは最初の襲撃と同様、肩と腕に噛みついた。腕への噛みつきは骨まで達し、手首から先の感覚がなくなったという。深手を負っているにもかかわらず、オアさんはこれ以上クマを刺激するまいと身じろぎ一つしなかった。「永遠に」続いているように思われたクマの襲撃だったが、実際には30秒ほどだった。オアさんを強く地面に叩きつけた後、クマはその場を立ち去ったという。
オアさんはさらにひどく傷ついた体を引きずって、トラックまで45分かかって移動。その場で写真を数枚撮り、短い動画も撮影した。フェイスブックに投稿するためだ。その後トラックを運転し、30キロ以上離れた病院に向かった。
オアさんと病院で面会した地元警察の職員は、オアさんの投稿した画像や動画について「100%本物」と証言。短い時間でクマに2度も襲われ、傷だらけになりながらも自力で病院までたどり着いたオアさんを「まぎれもないつわものだ」と称えた。