クモの糸が導く未来<3> 航空機材など新たな分野へ

クモの糸には特殊なタンパク質構造があり、圧力や変形に対する耐性を備えていることが判明した

2016.10.10 Mon posted at 09:00 JST

(CNN) クモの糸などを活用する試みは商業的にも注目され、医療品開発のための会社も設立できるようになった。「スパイドレックス」の活用方法を試行錯誤した末、最終的に狙いを定めたのが膝の置換手術だ。膝の置換手術は米国だけで年60万件が行われており、今後も増加が予想されている。

プラスチックなどを埋め込む方法もあるが、最終的にはインプラントを除去する必要があり重大な合併症を伴う恐れがあった。そこで英オックスフォード大学のフリッツ・ボールラス教授の研究チームは2社目のスピンオフ企業を設立。

膝軟骨の代わりとなる柔軟な物質の開発を進めている。このインプラントを足場として細胞が成長し、骨組織が再生していく仕組みだ。

現在はインプラントの臨床試験を行っている段階。ボールラス氏はここまでの進展に満足しており、2018年までに実用化に結びつける見通しを描いている。

膝の置換手術のためのインプラントなども生み出された

神経の修復に関しても別会社を通じて同様の構想が進んでいる。研究チームはこれを中枢神経系に応用して、深刻な脊椎(せきつい)損傷によって引き起こされるまひの治療に役立てたい考えだ。

クモ糸に基づく再生医療には新たな可能性が広がっており、毎日のように新研究が発表されている。クモのDNAをヤギに埋めこんだり酵母から糸を生成するといった試みのほか、縫合糸や移植片などへの活用も進んでいる。

ボールラス氏の研究チームは現在、自転車のヘルメットや航空機の機材などのテーマに取り組んでいる。効率性の高いクモの糸紡ぎの方法を高度な製造業に生かすための研究も進行中だ。同氏はクモが何百万年も前から生息してきたと指摘。研究は始まったばかりだとして意気込んでいる。

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