(CNN) 米ニュージャージー州のターミナル駅ホーボーケンで29日に起きた列車事故は、列車の速度を自動的に制御する安全システム「PTC」の必要性を改めて浮き彫りにした。
事故原因の究明に当たる国家運輸安全委員会(NTSB)は、安全システムに関する調査に重点を置く方針。PTCでは全地球測位システム(GPS)と無線信号、コンピューターで列車を監視し、信号を無視したり制限速度を超えたりすると自動的にシステムが作動して減速または停止させ、衝突や脱線などの事故を防止する。
事故を起こした列車を運行するニュージャージー・トランジットは旧式の安全システムを使っていたが、PTCは導入していなかった。
米議会は当初、2015年までにPTCの導入を義務付ける方針だったが、全米で列車が運行できなくなる恐れがあったことから期限を18年末までに延長していた。
列車の速度などについては、現場から回収したイベントレコーダーで明らかになる見通し。事故現場の制限速度は時速16キロだった。NTSBは列車の運転士からも事情を聴く。
ホーボーケンでは2011年にも33人の負傷者を出す列車事故が起きていた。NTSBはこの事故の原因について「駅に進入する列車の速度を運転士が制御できなかった」と断定し、「PTCがあれば衝突は防止できた」とも指摘していた。
鉄道事情に詳しいデラウェア大学のスティーブ・ディトマイヤー教授によると、ニュージャージー・トランジットが装備していたのは約40年前から使われている「ATC」というシステムで、制限速度を超えると運転士に警報を出し、反応がなければ自動的にブレーキがかかる仕組みだった。
PTCへの切り替えにはコストがかかることから、ニュージャージー・トランジットのような公営鉄道では導入が遅れているといい、「PTCがあれば防げたはずの事故は後を絶たない」とディトマイヤー氏は解説している。
ニューヨーク都市圏の駅に列車突っ込む