(CNN) 将来の火星探査を見据えた米航空宇宙局(NASA)の人体研究プログラム(HRP)の国際科学部門で副責任者を務めるジョン・チャールズ博士によれば、無重力空間に到達すると平衡感覚をつかさどる器官や内耳がすぐにこれを感知し、体液が下半身から上半身に移行するという。
これにより顔がむくみ脚が細くなる「鳥脚症候群」が起きるほか、喉の渇きが減って味覚が鈍感になったり、アレルギーのような鼻づまり感も生じたりする。
また約79%の宇宙飛行士は微小重力環境に入ってから24~48時間以内に「宇宙酔い」を経験し、食欲減退やめまい、吐き気に襲われる。
長期的なリスク
ホプキンス飛行士の懸念は骨の弱化や筋肉の萎縮など、身体への長期的な影響にも及んだ。宇宙では無重力状態になる影響で、骨中ミネラルや骨密度が1カ月ごとに1%以上低下する。
HRPの副主任研究員を務めるジェニファー・フォガーティー氏によれば、血液量の低下や免疫系の衰弱、循環器系の不調も起こる。無重力遊泳では体への負担が少なくなり、心臓の血液循環機能も低下するためだという。
NASAはこうした事態への対処法も開発した。食事やサプリメントで十分な栄養を摂取することのほか、特別に開発されたISS内のエクササイズマシン3機を使った運動も推奨している。フォガーティー氏は、ウォーキングマシンで走るなど足が何らかの物体の表面を蹴るようにすれば、感覚運動系に良い効果があると指摘する。
ISSにあるエクササイズマシン3機はウォーキングマシンやエアロバイク、多目的型ウエートマシンに似せたもので、骨量の減少が起こりやすい下半身を刺激することを狙いとしている。宇宙飛行士は1日2時間こうしたマシンを使う。運動により生活のリズムに変化をもたらし、精神的に発散する効果もある。
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次回「宇宙空間では人体に何が起こるのか<3> 火星探査へ向けて」は3月12日公開