(CNN) イラクやシリアで過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦を続ける米軍主導の有志連合は24日までに、ISISが保持する船舶100隻以上を沈めたことを明らかにした。今月だけで65隻を破壊したという。
イラクはほぼ内陸国だが、国内を流れるチグリス、ユーフラテス両河川では船舶の航行が可能。ISISはこれまで戦闘員搬送や即製爆弾攻撃の実施などで船舶を用いてもきた。これら船舶ははしけ船、小型船やエンジン付き船舶などが含まれる。
船の使用はイラク軍が支配する地域やISISが従来利用してきた橋梁(きょうりょう)が有志連合の空爆で破壊された時などに行われる。また、攻撃用に船全体に爆弾が仕掛けられることもあり、今年7月には戦闘ヘリコプター「アパッチ」がこの種の船1隻を破壊したこともあった。船はチグリス川にイラク軍が新たに架けた橋の破壊が目的だったという。
有志連合はCNNに、イラク・バイジ近くで9月10日、船舶に乗船しているISIS戦闘員を標的にした空爆の模様を移したビデオ映像も提供した。
ISISの船舶に対する攻撃は過去数カ月間続いてきたが、その回数はここ数週間目立って増えている。9月14、16両日には50回以上に達した。
攻撃の頻度増加はイラク北部に位置するISISの主要拠点モスルの奪回作戦とも関連付けられている。作戦の本格開始は早ければ10月にも予想されている。ISISは防御戦術としてチグリス川を使った戦闘員輸送を試みているともされる。同川はイラク第2の都市であるモスル中心部を貫き、同市を2地域に分断もしている。
モスル奪取作戦に関連して、ISISはイラク軍の進攻を遅らせるため橋梁の破壊を進める可能性も指摘されている。爆発物1000キロを積み橋破壊に向かう高速ボートの阻止は地上の即製爆弾に対する防御よりははるかに困難との見方もある。
イラクを歴史的に見た場合、両川の制圧は軍事作戦にとって極めて重要な要因となってきた。第1次世界大戦中、英国軍はオスマン帝国との戦いで小型の武装哨戒艇を両川に配備してもいた。米ワシントンにある戦争研究所の海軍問題研究者はイラク軍は河川戦闘には未熟なためそれだけ有志連合への依存が大きくなる。
この研究者は、ISISが多数の船舶を失ったとしても補充の方途には事欠かないと指摘。両川を利用している漁師、農民や他の住民から追加の船舶を奪えると述べた。