オバマ氏、テロ支援者制裁法に拒否権行使

オバマ大統領が法案に拒否権を行使

2016.09.24 Sat posted at 14:37 JST

ワシントン(CNN) オバマ米大統領は23日、2001年9月11日に起きた同時多発テロの遺族がサウジアラビア政府を提訴することを可能にする法案に対し、拒否権を行使した。これによりオバマ氏は、法案を上下両院で可決していた連邦議会や、民主、共和両党の大統領候補とこの問題をめぐり対立することになった。

ホワイトハウスは、この法案が成立すれば、米国の外交官や軍要員が外国で提訴される事態につながりかねないと主張。一方、連邦議会における両党の指導層は、来週にもオバマ氏の拒否権を覆す姿勢を示している。

オバマ氏はこれまで、12回にわたり拒否権を行使してきた。もし議会での採決が成功すれば、連邦議会が大統領の拒否権を覆すのはオバマ氏の在任期間で初めてのケースとなる。

この法案はテロ支援者制裁法(JASTA)。米国内における外国政府の訴訟からの免責特権を廃止し、特定の国が米国に対するテロ攻撃に関与したと断定された場合、連邦民事訴訟を提起することが可能になる。

連邦議会内ではこの法案を支持する声が多い。複数の遺族団体からの強い要請を受け、法案は先ごろ、議会で圧倒的多数で可決されていた。

オバマ氏は拒否権行使に合わせて発表された声明で、同時テロの遺族に対する「深い共感」を表明した。

だがオバマ氏は、この法案が成立すれば、米国の安全保障上の国益にとって深刻な打撃となり、重要な同盟関係も損なわれる可能性があると指摘。同法は「米国人をテロ攻撃から守ることにつながらず、こうした攻撃への我々の対応の有効性を高めることもない」とした。

オバマ氏はまた、今回の動きについて、諸外国との互恵的な取り決めを排除するもので、従軍中の米国人をはじめ外国にいる米国人が訴追される道を開く恐れがあるとも指摘した。

また今回の法案に対し、同盟国から不満が寄せられている点にも言及。法案が成立すれば、テロ対策など鍵となる安全保障問題で、同盟国間の協力が制限される恐れがあるとしている。

一方、米大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン前国務長官は同日、法案への支持を表明。また共和党候補のドナルド・トランプ氏は声明で、拒否権の行使は「恥ずべき」動きだとしている。

法案を主導した民主党のチャック・シューマー上院議員は「失望する決定で、議会ですぐに覆される」と発言。共和党のジョン・コーニン上院議員も、拒否権を覆して被害者家族に正義を追求する機会を与えると述べた。

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