英動物園、中国の「世界一悲しいホッキョクグマ」に救いの手

「世界一悲しい」飼育環境に置かれているというホッキョクグマのピッツァ

2016.09.20 Tue posted at 17:26 JST

(CNN) 英国の「ヨークシャー野生動物公園」は20日までに声明を発表し、中国・広州市の水族館で飼育されているオスのホッキョクグマ1頭を同公園で引き取ると申し出た。ピッツァの名で知られるこのホッキョクグマは、現状で非常にストレスのたまる飼育環境に置かれていることから「世界一悲しいホッキョクグマ」と呼ばれて注目を集めている。

香港を拠点に活動する動物保護団体「アニマルズ・アジア」のデイブ・ニール氏によると、ピッツァが暮らす広州の「グランビュー水族館」は完全な屋内施設で自然光を浴びることができない。動物にとっての快適さよりも来館者の見やすさを優先した設計で、動物保護の観点から大いに問題があるという。

また北京に拠点を置く団体は人民日報に対し、ピッツァの飼育エリアを「残酷なもの」と非難。40平方メートル足らずの広さの場所に浅いプールがあるだけで、ひっきりなしに来館者がやってきては写真を撮ったりガラスの壁をたたいたりしていると説明した。

今年、アニマルズ・アジアが同水族館の閉鎖を求めてネットで署名を募ったところ、50万人を超える署名が集まった。中国国営紙の環球時報によれば、グランビュー水族館に対しては現在、施設内で複数の動物が死亡していることを受けて広州市当局が調査に乗り出しているという。

人工物のみに囲まれた現在の状況は、ピッツァに多大なストレスを与えているとみられる

同じくピッツァの保護に向けて活動している「PETAアジア」の副代表を務めるジェイソン・ベーカー氏はCNNに対し「中国には動物の保護を義務付けた法律がないため、極めて劣悪な施設環境の動物園でもそのまま運営できている」と指摘した。

ピッツァの引き取りを申し出たヨークシャー野生動物公園には、野生の環境を再現したホッキョクグマ用の飼育エリアが用意されている。同園はピッツァの引き取りについて、金銭の支払いを伴うものではなく、グランビュー水族館が代わりのホッキョクグマもしくはその他の動物を飼育しないことが条件だと明言。中国から英国へのピッツァの移動が実現するかどうかは水族館側がこうした条件をのむかどうかにかかっているとしている。

グランビュー水族館の広報担当者はCNNに対し、ヨークシャー野生動物公園からの申し出は受けていないとした上で、施設内の動物については科学的な調査に基づき快適な飼育環境を整えていると主張。国外の団体はピッツァの現状を「大げさにでっち上げている」と批判した。

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