(CNN) 第2次世界大戦中、ハンガリーにあるユダヤ人向けミッションスクールの職員として働き、女生徒たちとともにアウシュビッツ強制収容所に送られて死亡した英国人女性について、生前の写真や遺書などを含む新たな史料がこのほど見つかった。英国へ帰国できたにもかかわらず女性徒たちと同じ運命をたどることを選んだこの女性の自己犠牲の精神に、改めて称賛の声が寄せられている。
英スコットランド出身のジェーン・へイニングさんは、地元のキリスト教団体から宣教師の1人としてハンガリーに派遣された。仕事は首都ブダペストで運営されていたユダヤ人向けミッションスクールで女生徒たちの世話をすることだった。
ナチス・ドイツによるユダヤ人への弾圧が強まってからもへイニングさんは同スクールにとどまり、4年間にわたって315人の子どもたちを保護し続けた。その後密告を通じて、ナチスの秘密国家警察(ゲシュタポ)に逮捕され、1944年にアウシュビッツ強制収容所で病死した。47歳だった。
逮捕前、へイニングさんに対しては再三にわたって英国へ戻るよう勧告がなされていたが、本人は女生徒たちと別れて単身帰国することを断固として拒否。今回、英エジンバラの公文書館で偶然見つかった史料には「自分は職務を継続する」「子どもたちは日差しの降り注ぐ日にも私を必要としている。暗闇の日々ならなおさらそうだ」と、ブダペストに残る強い決意を表明していたことが記録されている。へイニングさんが世話をした女生徒たちには、身寄りのない子どもも多く含まれていた。
また42年に書かれた自筆の遺書には、死をも覚悟したうえで女生徒たちと運命を共にするとの内容がつづられている。
スコットランド教会で国外の伝道に携わる責任者は「ジェーン・へイニング本人の書いた文書が見つかったのは非常に素晴らしい」とコメント。彼女の「英雄的な行為と自己犠牲」をより深く考察する機会になると語った。