砂糖業界、健康リスクの科学的論議を操作 有利な研究支援か

砂糖業界が心疾患を巡る科学的論議の操作を行っていたという=Amanda Greene/Turner

2016.09.15 Thu posted at 14:51 JST

(CNN) 糖分の摂取と心疾患の因果関係は60年ほど前から指摘されていたにもかかわらず、今になってようやく専門家が心疾患のリスク増大について一致した見解を示すようになったのは、砂糖業界がスポンサーとなって、糖分摂取による健康リスクに疑問を投げかける研究を後押ししたためだった――。そんな実態について調べた論文を米カリフォルニア大学の研究チームが医師会の専門誌JAMAに発表した。

砂糖業界は当時、糖分摂取による健康リスクを覆い隠す目的で、「巧妙な手段」を使って心疾患を引き起こす主な原因は脂肪分にあるとする説を推進していたと論文では指摘している。

研究チームによれば、脂肪分を心疾患の主なリスク要因と位置付ける当時の研究は、「糖類研究財団(現・砂糖協会)」という業界団体が資金を提供して後押ししていたという。

1960年代、心疾患の原因については2つの説が浮上していた。英生理学者ジョン・ユドキン氏は、糖分の摂取と心疾患との関係に着目し、糖分を取り過ぎると中性脂肪の血中濃度が高まる可能性を指摘した。

これに対して米生理学者のアンケル・キーズ氏は、心疾患は悪玉脂肪の取り過ぎに関係があると論じ、そうした脂肪がコレステロールを増やして心疾患の原因になるという説を打ち出した。

キーズ氏の説はユドキン氏の説よりも有力視されるようになり、キーズ氏は1961年の米誌「タイム」の表紙にも登場した。

心疾患の原因については、脂肪分のリスクにスポットを当てる研究が有力視された

ユドキン氏の説については、砂糖業界が心疾患に関する科学的論議を「操作」し、糖分摂取に関する他の研究と共に覆い隠したと、カリフォルニア大学の研究チームは結論付けている。

同チームは1959年~71年にかけて、糖類研究財団と研究者の間で交わされた手紙を集め、内容を調べた。

この中の1通では財団の幹部がハーバード大学の研究者(2009年に死去)の論文の草稿について、「我々が想定していた通りの内容だ。発表を楽しみにしている」と記していた。

カリフォルニア大学のローラ・シュミット教授はこの内容について、「業界が科学を操作していたことをうかがわせる一端」と解説する。

当時の論文やシンポジウムの内容なども調べた結果、砂糖業界が1960~70年代にかけて糖分のリスクに疑問を投げかける研究を助成する一方、脂肪分のリスクにスポットを当てる研究を支援していたことが分かったという。

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米国では食品の脂肪分が減らされるにつれ、味覚を保つために砂糖の使用が増えた。「砂糖利益団体は常に科学研究の最前線にいて、極めて巧妙なやり方で介入し、自分たちの不利になる内容から論議をそらして自分たちのためになる方向へ向かわせようとした」。カリフォルニア大学のスタン・グランツ教授はそう解説する。

シュミット教授は、こうした心疾患についての研究が、現代の米国人の健康に影を落としたと指摘。「もし1965年に戻って『心配すべきは脂肪分と心疾患だけでなく、糖質や糖類にも目を向けなければならない』と呼びかけていれば、肥満や心疾患などの現状は大きく変わっていたかもしれない」と話している。

糖類研究財団を引き継いだ砂糖協会は電子メールで声明を出し、「60年も前に起きた出来事についてコメントするのは難しい」という見解を示した。

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