瓦礫の町で挙式、妹守って命落とした姉 イタリア地震の明暗

結婚式を挙げたラモン・アダッツィさんとマルティナさん

2016.08.29 Mon posted at 10:43 JST

イタリア・アクアサンタ・テルメ(CNN) 大地震で壊滅的な被害が出たイタリア中部の震源地に近いアクアサンタ・テルメの町で、1年以上前から結婚式の準備をしていたカップルが28日、予定通りに挙式した。今回の地震では多くの町が瓦礫と化し、これまでに291人の死亡が確認されている。

結婚式を挙げたのはラモン・アダッツィさんと妻になったマルティナさん。この日のための準備は完璧だった。1年以上も前から入念に計画を立て、ウェディングドレスもスーツも会場もすべて手配済みだった。

ところが式の4日前になって大地震が発生。会場になるはずだった教会は祭壇ががれきに覆われれ壁にはひびが入り、16世紀のフラスコ画も粉々になった。建物を使うことは不可能だった。

それでも式は中止しなかった。

最初はショックを受けたという2人だが、「それでも結婚を祝いたかった。私たちにはほかのことを考える瞬間が必要だから」とラモンさん。インスタグラムに投稿した写真には、「悲しみの中にあっても喜びの瞬間を持つことが大切。自分たちの幸福を分かち合わなければ」と書き添えた。

まだ余震が続く中、町の広場に会場を移して、山の緑と崩れかけた建物をバックに行われた挙式では、ブラジルやカナダなど遠方からの列席者も含めて数十人が2人の門出を祝福した。

地震により一部が損壊したアマトリーチェの教会

一方、同地から約20キロ南西のアマトリーチェではこの日、今年で50回目となるスパゲティー祭りが開かれているはずだった。

アマトリーチェの普段の人口は2000人。しかし祭りが開かれる週末を中心に、夏の間の人口は1万5000人に膨れ上がる。このため安否不明者の確認も難しい状況が続く。

地震発生から4日がたち、生存者の発見はほぼ絶望的となった。余震による倒壊を防ぐため、作業の重点は半壊した建物の取り壊しに移っている。

28日の作業は平年を大きく上回る34度の猛暑の中で行われた。数日後には暴風雨も予想され、堆積(たいせき)した土埃(つちぼこり)が泥沼と化す恐れもある。

アスコリ・ピチェーノの町では体育館が葬儀場となり、アルクアータ・デル・トロントで死亡した35人の棺(ひつぎ)が安置された。

司祭によると、そのうちの1人、ジュリア・リナルディさんという幼い少女は、妹のジョージアさんに覆いかぶさるようにして死亡しているのが見つかった。ジョージアさんは助かったが、ジュリアさんは妹を守って命を落としたとみられる。2人は互いに抱き合った状態で発見されたという。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。