「ポーランドの強制収容所」、事実歪める 政府が表現に処罰法案

ナチス占領下のポーランドに建てられたアウシュビッツ強制収容所の跡地

2016.08.18 Thu posted at 16:48 JST

(CNN) ポーランド政府はこのほど、ナチス・ドイツが国内に建てた収容所について「ポーランドの強制収容所」「ポーランドの絶滅収容所」「ポーランドの死の収容所」といった表現を使った者を3年以下の禁錮刑に処す法案を閣議決定した。

ポーランドのジョブロ司法相は声明を出し、新法の下では「事実に反して公に、ポーランドという国家がドイツの第3帝国による犯罪に加担し、責任もしくは共同責任をもつかのように発言すれば刑事責任を問われることになる」と述べた。

新法に違反した場合、罰金もしくは3年以下の禁錮刑の対象となる。故意でない発言についても逮捕・罰金の対象となるという。

ポーランドは第2次世界大戦中にナチス・ドイツに占領された。数百万人の市民が命を落としたが、米ホロコースト記念博物館によれば、このうち300万人はホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で殺されたユダヤ人だ。

ポーランド政府はこれまでも、占領下のポーランドでナチスが設立した収容所についてメディアや政治家が「ポーランドの収容所」と表現するたびに訂正を求めてきた。単に所在地を示すためだけに「ポーランドの」という表現が使われた場合でも、ホロコーストに対する責任がポーランドにあるような印象を与えるとして異議を唱えている。

戦火で荒廃した首都ワルシャワのゲットー(ユダヤ人強制居住地区)

だが首都ワルシャワにあるSWPS大学のベン・スタンリー講師(政治学)は「死の収容所はナチスのものであると知らしめるのは必要だ。(だが)知らなかった人を罰するのはばかげている」と述べる。

スタンリー講師によれば、在外公館や非政府組織(NGO)は近年、そうした表現を使った新聞社に働きかけを行い、実績を上げてきた。多くの場合、新聞社は訂正記事を出して再発防止策を採っているという。

新法はポーランド国外の人々にも適用されるのかとのCNNの問いに対し司法省は、法案段階ではそうだと回答した。

新法が成立するには議会の承認が必要。成立までのタイムテーブルについては明らかにされていない。

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