(CNN) 米麻薬取締局(DEA)は11日、州レベルで医療用や嗜好(しこう)用の使用を認める動きが広がっているマリフアナ(乾燥大麻)について、連邦法上の規制を緩めるつもりはないとの立場を明らかにした。
DEAの発表は研究目的での規制緩和を求めた嘆願2件に対応したもの。マリフアナは現在、規制物質法で「付表1」に分類されているが、これが今後も維持されることになる。付表1には医療上の使用が認められず中毒性の高い物質が指定されており、ヘロイン、LSD、エクスタシーなども含まれている。
DEAは嘆願を受け米食品医薬品局(FDA)に「科学的、医学的な評価」を要請。その結果、マリフアナの医療目的での研究では、治験薬の申請に基づき、科学的に有効かつ適切に管理された臨床試験を実施するのが最も妥当だとの結論に達し、今回の決定に至ったと説明した。
だが、DEAを批判する人々は研究者はジレンマに陥っていると主張する。規制緩和を求めるにはさらなる調査が必要となるが、それにはDEAやFDA、国立薬物乱用研究所(NIDA)などの連邦関係機関から承認を得る必要がある。
NIDAは研究用の大麻栽培で1968年からミシシッピ大学と契約。同大以外はその栽培が認められていない。研究者がマリフアナを入手するにはNIDA経由で入手するしかないが、NIDAはその危険性や中毒性の検証を使命としており、有効性を調べたい研究者とは立場のずれがあった。
DEAは今回、研究用の大麻の生産や流通について、新規参入を認める方針も明らかにした。「これまでNIDAの許しを請わずに実験はできなかった」と語る精神科医のスー・シスリー氏は、DEAの新方針を「科学者の大勝利だ」と称賛。今後10年間のマリフアナの医療利用を導く転換点だと評価した。
この点、DEAは同局がこれまでFDAやNIDAの承認を経た研究の妨げとなったことは一度もないと言及。今後もマリフアナ研究の合理化に向けFDAやNIDAと連携していくと強調した。DEAによると、今年6月時点でマリフアナも含めた付表1の指定物質に関する研究は483件登録されているという。
ただ、マリフアナの規制緩和に応じない今回の決定には患者や研究者から不満の声が上がっている。オレゴン州選出のアール・ブルームノアー下院議員(民主党)は、「付表1への指定の維持は時代遅れで、誤ったアプローチだ。患者やマリフアナの事業者を州法と連邦法のはざまに置き去りにしている」と批判した。
2歳の時に難病のドラベ症候群と診断されたコロラド州の少女は、1週間に最大300回の発作に見舞われることもあったが、5歳から医療用マリフアナの投与を始めたところ発作が1年以内に月1~2回にまで減ったという。少女の母親はマリフアナの付表1への指定について、「違法とされ、いつでも取り上げられる恐れがある」と懸念を示す。コロラド州は医療用、嗜好用ともにマリフアナの使用が合法とされ、これまでこの少女と同様の境遇の100家族以上が移住してきている。
ただ、付表1からの指定解除がマリフアナの医療目的利用を促進するわけではないと指摘する人もいる。シスリー氏の研究を支援する団体の創設者、リック・ダブリン氏は「付表1の薬物でも研究可能なことはこれまで示してきた」と語る。ただ、NIDAによる研究用大麻を巡る独占状態については、「マリフアナの医療利用の上で最後の政治的障害だった」との認識を示した。
州法レベルでは現在、25州とコロンビア特別区で医療用マリフアナの使用が認められている。