香港(CNNMoney) 中国国営企業が出資する英国の原発建設プロジェクトについて英国のテリーザ・メイ首相が見直しを表明したことに対し、中国の駐英大使が英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で計画続行を促した。計画を破棄すれば重い代償を負うと警告した形だ。
中国広核集団(CGN)が出資して英イングランド南西部に原発を建設する230億ドル(約2兆3000億円)規模のプロジェクト「ヒンクリーポイント」は、昨年10月に習近平(シーチンピン)国家主席が訪英した際に大々的に発表された。
しかし欧州連合(EU)からの離脱を選んだ6月の国民投票を受けてキャメロン前首相は辞任。後任のメイ首相は同プロジェクトを見直すと表明した。
これに対して中国の劉暁明・駐英大使はフィナンシャル・タイムズへの寄稿で「中英関係は今、重大な歴史的岐路にある」と強調。「英国が引き続き中国に門戸を開放し、英政府が今後もヒンクリー・ポイントを支え、プロジェクトが円滑に進行できるよう、できるだけ早く決断することを望む」と迫った。
劉大使はさらに、中国企業が過去5年で英国に投資した額は、フランス、ドイツ、イタリアからの投資を合わせた額を上回ると指摘した。昨年の英国からの輸出も中国が3%強を占めている。
昨年10月に発表されたヒンクリーポイント計画では、新原発の株式の33.5%を中国広核集団が保有、フランスのEDFが残りを保有する予定とされた。
中国はこれに関連した案件として、ロンドンの約100キロ北東に中国独自の原子炉技術を使った別の原発を建設し、66.5%の持ち分を確保する計画を進めている。
メイ首相は、ヒンクリーポイントに関する意思決定を遅らせる理由は明らかにしていない。
しかし同プロジェクトに対しては最初から、中国に重大なインフラへのアクセスを許せば国家安全保障が脅かされかねないと批判する声が出ていた。
メイ首相の補佐官ニック・ティモシー氏は同プロジェクトが発表された時点で、「どれほどの貿易や投資があろうと、敵性国家に国の重要な国家インフラに簡単にアクセスさせることは正当化できない」と指摘していた。
中国を含む多くの国では、関係が悪化した場合の火種になりかねないとして、大型エネルギープロジェクトに対する外国の投資を禁じている。
しかし中国の新華社通信は先週、「EU離脱の混乱から脱出しようとする国にとって、開放姿勢は脱出へ向けた鍵となる」と牽制(けんせい)していた。