ロンドン(CNN) 夏のバカンスシーズンを迎えて英国から欧州を目指す旅行者が急増し、港湾都市ドーバーにつながる高速道路が大渋滞に見舞われている。相次ぐテロを受けてフランスが国境警備を強化し、対応が追い付かなくなったことが原因。渋滞に巻き込まれて車中泊を余儀なくされる旅行者も続出した。
ドーバー港は、対岸のフランス・カレー行きのフェリーが発着する欧州への玄関口。近郊のフォークストーンには英仏海峡トンネルの入り口がある。出発前の乗客に対しては、フランスの国境警備局が保安検査を実施する。
ドーバー発のフェリーを運航するP&Oフェリーは24日早朝の時点で、同港に通じる高速道路は最大で12時間の渋滞が発生し、港に到着してもさらに2時間待ちの状態だと説明した。
港まであと約16キロの地点で渋滞に巻き込まれたという女性は、ようやくフェリーに乗船できるまでに17時間半かかったといい、「いつもはフランス人が大好きだけれど、今日だけは大嫌い」とツイッターにぼやいた。
ケント警察は24日、高速道路ではまだ最大で10時間の渋滞が続いていて、あと2日はこの状態が続く見通しだと発表した。
英高速道路当局によると、渋滞の原因は、相次ぐテロを受けてフランス政府が入国審査を強化したことにある。フランスでは130人の死者を出した昨年11月のパリ連続テロ以来、非常事態が続く。
ドーバー港によれば、フランス国境警備局は深刻な人員不足に陥っていて、一時は何百台も連なった長距離バスの乗客の入国審査に対応する係員が1人しかおらず、バス1台を通すのに40分を要する状況だった。
英内務省は、国境警備隊も動員してフランスへの入国審査の対応を支援していることを明らかにした。
フランスが十分な人員を配置しないのは、欧州連合(EU)離脱を選んだ英国に対する報復ではないかと勘繰る声も。
ドーバー港は旅行者に対して出発の予定を遅らせるよう勧告。どうしても出かける場合は十分な食料と水を用意するよう促している。
路上では救急隊やボランティアが渋滞に巻き込まれた車にペットボトルの水などを配布。中にはキャンプ用品を使って車内でバーベキューをする旅行者や、路上でパフォーマンスを披露するミュージシャンの姿もあった。