(CNN) 米フロリダ州で自閉症の男性をなだめようとしていたグループホームの療法士が、地面に仰向けになって両腕を挙げていたにもかかわらず警官に撃たれたと訴え、現場を撮影した映像を公開した。ノースマイアミ警察は21日、警官1人を休職処分とし、捜査していることを明らかにした。
公開された映像では、道路上で仰向けになって両腕を挙げた男性が、隣に座る男性について「彼が持っているのはおもちゃのトラックだけ」「私はグループホームの行動療法士です」と叫んでいる。
事件が起きたのは18日。療法士のチャールズ・キンジーさんは、グループホームを抜け出した23歳の男性患者に付き添い、駆けつけた警官に向かって、患者に危害を加えないでほしいと訴えていたという。
キンジーさんはCNN系列局WSVN-TVの取材に対し、「両手を挙げている限りは撃たれないと思っていた」「でもそれは間違いだった」と語った。
ノースマイアミ警察によると、18日午後5時過ぎ、銃を持った男性が自殺しようとしていると通報があり、複数の警官が現場に駆け付けた。警官は現場にいた男性2人の説得を試みた後に発砲したと説明している。現場から銃は回収されなかった。
キンジーさん側は、警察のこの説明に納得していない。キンジーさんによれば、男性患者が持っていたのは銃ではなくトラックの玩具だった。駆けつけた警官に対しては状況説明を試み、患者にはじっとしたまま地面に伏せるよう促していたという。
そのやり取りの一部を収録した映像や、キンジーさんがうつ伏せになって手錠をはめられている映像も、弁護士を通じて公開された。キンジーさんは2、3発の銃撃を受け、右足を撃たれたという。その後うつ伏せにされて手錠をかけられ、救急車が到着するまで20分ほど待たされたと話している。
キンジーさんを撃ったのは30歳のヒスパニック系の男性警官で、事件を受けて休職扱いとなった。フロリダ州当局も調査に乗り出し、検察は独自の捜査を行って、警官による銃撃を事件として立件するかどうか判断する方針。
病院によると、キンジーさんの容体は安定している。しかし21日に予定されていた記者会見は、心的外傷を理由に中止になった。
米国では、黒人男性が警官に射殺される場面をとらえた映像が相次いで公開され、全米に抗議運動が広がっていた。その報復と称して警官が銃撃される事件も相次ぎ、これまでに8人の警官が殺害されている。