中国で米製品の不買運動 南シナ海の仲裁判決受け

仲裁判決に反発する中国国民が米企業へのボイコットを展開

2016.07.21 Thu posted at 16:52 JST

北京(CNN) 南シナ海の領有権問題で常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が今月12日、中国の主張を全面的に否定する判決を出した後、中国国内ではケンタッキーフライドチキン(KFC)やアップルなど米国系商品の不買運動が各地で発生している。

領有権問題を同裁判所に持ち込んだフィリピンの果物も対象になっている。この中で中国の国営紙・人民日報は20日、これら抗議運動は不合理で混乱を生じさせるものといさめる論説を掲載した。

中国政府は仲裁判決を認めない立場を終始主張しているが、不買運動を野放しにしておけば同国の評価を失墜させることを懸念し、締め付けに転じたとみられている。

12日からの1週間内には中国の民族主義者らが複数の都市で米系飲食店チェーンをボイコットするビデオ映像や画像がソーシャルメディア上に掲載された。中国のポータルサイト「搜狐」によると、推定11カ所の都市で18日、KFCの不買運動が開始された。

湖南省長沙市では住民がKFC店外で「KFCとマクドナルドは中国から出て行け」との垂れ幕を掲げ、気勢を上げた。同国中部の河南省では地元警察が19日、KFC店外で破壊行為につながりかねない抗議運動を組織した3人を拘束した。

ソーシャルメディア上ではアップルに対する反感も広がり、iPhone(アイフォーン)を粉砕するキャンペーンも始まった。

米ファストフード、KFCの製品も不買運動の標的に

フィリピンを狙った動きも出ており、中国最大のショッピングサイト「淘宝(タオバオ)」ではフィリピン産の果物の代わりに地元で栽培した乾燥マンゴーの売り込みを図る業者が現れた。ある業者は「自国産の乾燥マンゴーだけを売る。南シナ海を守る」と書き込んだ。

ただ、中国政府はここに来てこれら抗議運動の収束を図る動きを見せ始めている。2012年に日本との領土論争が起き、国内で大規模な反日集会などが広がった際に中国政府が封じ込めを図った際の状況に類似している。

人民日報は20日の論説で、国家発展を助長する行動はまさしく愛国的と呼べようが、意図的に公共治安を犠牲にするいわゆる愛国主義は国家と社会に支障だけを与えると主張。国営の新華社通信は、全て合理的な行動を選ぶ現実的かつ効果的な愛国主義だけが意味をなすなどと論評した。

専門家は12日の仲裁判決は中国人に愛国心の高揚をもたらしたと見ている。シンガポール国立大学の法学部教授は「(判決を受け)実際、中国人の穏健派がたちどころにタカ派に転じた」と指摘した。

ただ、中国のソーシャルメディア上にはタカ派的な行動にくみしない主張もある。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のある利用者は「中国人だが不買運動は馬鹿げている。不買運動の参加者をボイコットする」との意見を寄せた。

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