トルコに米軍の核爆弾50発、安全上の懸念浮上

クーデター未遂が起きたトルコで米軍が管理する核兵器について安全上の懸念が出ている

2016.07.21 Thu posted at 14:32 JST

ワシントン(CNN) トルコで起きたクーデター未遂で同国の政情が不安定化する中で、イスラム系テロ組織とも距離的に近いトルコの基地にある米国の核兵器について、安全上の懸念が浮上している。

専門家のほとんどは、米国がトルコにあるインジルリク空軍基地に核兵器50発を保有していると推定する。同基地にあるのは冷戦時代の核爆弾「B61」とされ、米国とトルコの関係に詳しいジャーマン・マーシャル・ファンドのジョシュア・ウォーカー氏は、同基地の核兵器の存在は「公然の秘密」と言い切る。

15日のクーデター未遂を受けて、トルコ当局はインジルリク基地を包囲して電力の供給を絶ち、基地周辺の領空を一時的に閉鎖した。

インジルリクは米国とトルコの合同空軍基地で、1950年代にトルコ南東部に設置された。過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」との戦闘でも重要な役割を担い、米軍がシリア空爆の拠点としてきた。

米国防総省は同基地の核兵器の存在について公式には確認していない。しかし複数の米当局者は、トルコにある米国の兵器はすべて米国が安全を確保していると説明する。

国防総省のクック報道官は18日、記者団に対し「トルコで我々がコントロールしているすべてについて、安全を確保するために必要なあらゆる措置を講じた」と語った。

安全上の懸念から監視を強めたり核兵器をトルコ国外に移したりする目的で、米軍の関係者やエネルギー省の専門家がトルコに渡った形跡はない。

ただ、もしそうした事態になったとしても、大統領以外にはごく少人数しか知らされない極秘作戦になる見通しだ。

インジルリク基地の米軍機や兵器や人員は、トルコ軍とは別の場所に置かれているが、クーデター未遂の発生から数時間のうちに、米国はインジルリク基地を含めてトルコに駐留する兵士2700人の警戒レベルを最高に引き上げた。

警戒レベルの引き上げは全般的な安全上の懸念に関係するもので、核兵器を特段の対象としたわけではないと米当局者は説明する。しかしこれによってインジルリク基地の警備態勢も強化された。

しかし、ジャーマン・マーシャル・ファンドのウォーカー氏は、核兵器の安全性に関する懸念は「大げさ」との見方を示し、兵器を使える状態にするためにはワシントンから起動する必要があると指摘した。

冷戦時代の核兵器が残されているのは、北大西洋条約機構(NATO)の抑止戦略の一環だ。プラウシェアズ・ファンドの専門家、トム・コリーナ氏によれば、米国はドイツ、イタリア、オランダにも同種の核兵器を配備しているという。

トルコには長年にわたって核兵器を配備してきた。中でも「ジュピター」ミサイルは、旧ソ連と米国が核戦争寸前まで追い込まれた1962年のキューバ危機を受け、当時のケネディ大統領が密かにトルコから撤収したことで知られる。

コリーナ氏によると、NATO加盟国に配備した核兵器の安全性を巡る懸念が浮上したのは今回が初めてではない。トルコでは1971年、ギリシャでは1967年にクーデターが発生。トルコとギリシャがキプロス島を巡って衝突した1974年には、米国はギリシャから核兵器を撤収し、トルコの核兵器は無力化した。

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