(CNN) スマートフォンやノートパソコンで仕事を自宅に持ち帰るのが簡単になる中、仕事に熱中することと中毒になることの差は時として見分けにくくなっている。ノルウェーの大学の研究者はこのほど、真にワーカホリック(仕事中毒)といえる人の数を明らかにするため大規模調査を行った。
調査はノルウェーのベルゲン大学の研究者らが国内で仕事に就いている16~75歳を対象に行ったもの。回答があった1万6426人のデータを分析した。
各種の依存症の検査に用いられる診断基準を適用した結果、7.8%がワーカホリックに分類され得ることが判明した。こうした人々は罪悪感や不安感を軽減するため、趣味や運動に充てる時間を犠牲にして仕事をしていることになる。
調査チームを率いた臨床心理学者のセシリ・アンドレアッセン博士によれば、ワーカホリックの分野で多くの患者に共通する傾向を探った研究はこれまでなかったという。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)との関連も明らかになった。ワーカホリックの人のうち32.7%がADHDの診断基準を満たしているという。一方、ワーカホリックでない人のうちでADHDの基準に当てはまる割合は12.7%にとどまる。
アンドレアッセン氏はADHDの人について、不注意や衝動性、過活動といった特徴を持つことが多いと指摘。こうした衝動性のため、先のことを考えずに多くの仕事を引き受けたり、実際には処理しきれないような量の仕事を抱えてしまうのではないかとの仮説を提示する。
米国では2011年の時点で、4~17歳の約11%がADHDの診断を受けており、患者数は増加基調にある。ただ、これまでADHDとの関連が明確に指摘されてきたのは子どもや思春期の患者で、大人の場合は見過ごされることが多かったという。
アンドレアッセン氏は、「ADHDは子どもに特有のもので成長と同時に解消されると考えられてきたため、大人のADHDに関する知識は少なかった」と指摘する。
大人でも仕事があまりに大変だと感じる場合にはADHDの恐れがあるという。自身の弱点を補うために週末や夜遅くまで働いている可能性があるほか、オフィスが静かな時間帯に働くのを好む例もあるようだ。
今回の研究ではワーカホリックと強迫性障害(OCD)の関連も判明。ワーカホリックと分類される人の約4分の1はOCDの診断基準を満たしていることが明らかになった。
不安感やうつ病との関連も指摘されている。ワーカホリックの人の約3分の1が不安にさいなまれる経験をしているほか、その8.9%はうつ病の診断基準を満たしている。
今回の研究では、依存症が飲酒やギャンブルのような行動だけに限られるものではないことが浮き彫りになった。ただ、あくまでノルウェーの人口の一部をサンプルとした研究であり、因果関係には言及していないことに注意が必要だ。
アンドレアッセン氏は今回の研究について、一定時点における断面図を切り取ったものであり、長期的な効果までは測定していないと強調。因果関係に関しては言及できないとしている。
またADHDの人については、非凡な才能に恵まれる場合もあり、仕事を極端な形で追求する傾向にあると指摘する。歴史上ではビジネスリーダーや芸術家などにこの種の傾向が見いだされるという。