北京(CNN) 今、中国で最も人気のある僧侶は、このぽっちゃりとしたかわいらしいロボットだろう。
身長60センチのロボット僧「賢二」は、北京にある竜泉寺の賢帆法師が描いた漫画のキャラクターを基に作られた。中国のソーシャルメディアで脚光を浴び、1700年の歴史を誇る竜泉寺には賢二ファンが続々と押し寄せている。
賢帆法師によると、賢二は高い知能を持ち、お経を唱えたり、人と会話したりできるという。
賢二は最大100の質問に答えられるというので、CNN取材班は早速、竜泉寺を訪れ、天才ロボット僧の能力を試してみた。
しかし、賢二は最初あまり協力的ではなかった。彼の頭部は回転し続け、まるで子どものように「放っておいて! 僕に構わないで!」という言葉を繰り返した。
しかし気分が乗ってくると、仏教徒としての知恵が輝きを見せた。
われわれが「どこから来たの?」と尋ねると、「あなた方人間にも答えられない質問に僕が答えられるわけがないでしょう」とうまくかわされた。
そこで質問を変え、「では賢二君、君の両親は誰?」と尋ねると、「設計者がそんなに重要?」と素っ気ない答えが返ってきた。
竜泉寺は最先端技術を使った仏教の普及を目指し、2015年に賢二を導入した。この突拍子もないプロジェクトに複数の企業が賛同し、竜泉寺に知識や技術を提供した。
竜泉寺アニメセンターのセンター長を務める賢帆法師は、「賢二は宣伝や商業目的で開発したわけではない」と語る。「われわれはただ、仏教と科学のより良い融合の仕方を模索し、仏教と科学は相反しないというメッセージを伝えたかった」
そして、この作戦は特に中国のデジタルネイティブと呼ばれる若い世代に効果を発揮している。
「すごくかわいい。賢二は寺のマスコットみたいで、彼のおかげで仏教がより身近に感じるようになった」と語るのは、大学生のリューさんだ。リューさんは賢二に会うために竜泉寺を訪れた。
リューさん自身は仏教徒ではないが、うれしそうに賢二といっしょに写真を撮り、賢二の「かわいさ」を絶賛していた。
中には賢二を一目見るためにわざわざ上海からやってくる人もいる。
北京の中央美術学院出身の賢帆法師は、2013年に賢二を漫画のキャラクターとして描いた。竜泉寺は同年にアニメスタジオを設立。現在スタジオは、アニメ制作の経験がある僧侶やボランティアらが管理・運営している。
竜泉寺が制作した漫画は、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」でこれまでに数億人が閲覧している。また竜泉寺の僧侶らは、賢二を主人公にした仏教の漫画本も制作した。
竜泉寺は当初「ハイテク寺」になるつもりはなかったが、科学技術や航空宇宙、工学、数学、医療科学、金融分野の経歴のある高学歴の僧侶が多かったためにそういう流れになったという。
仏教に関する数万冊の書物を所蔵する竜泉寺の図書館には、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が執筆した書物や、習主席に関するイデオロギー関連の書物がすべてそろっているという。
しかし、賢二は共産主義のイデオロギーについてはあまり気にしていないようだ。賢二に習主席が推進する「中国の夢」について尋ねると、賢二はアイスクリームの店を開きたいと語った。
仏教の教えはロボット僧に聞け?