米大統領選は躍進のチャンス? リバタリアン党の実態を探る

リバタリアン党は大統領選の台風の目となるか

2016.07.18 Mon posted at 17:34 JST

(CNN) 「リバタリアン(自由至上主義者)」について語るとき多くの人が連想するのが金と大麻だ。リバタリアンは米連邦準備制度理事会(FRB)に対する会計監査を主張し、金本位制への回帰を提唱する一方、薬物の取り締まりに反対し大麻を好む人も多い。だが今年の米国政治がこれまでにない展開を見せるなか、リバタリアン党はこうした極端な位置づけから脱却して躍進するチャンスを迎えている。

6月下旬に発表されたCNNと調査会社ORCの共同世論調査によると、リバタリアン党の大統領候補、ゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事は全米で9%の支持を獲得した。緑の党の候補となる可能性が高いジル・ステイン氏も7%の支持を得ている。

民主、共和両党の候補に投票すると決めていない有権者に対し、この2人を加えた4人の争いになるとの想定で質問したところ、ジョンソン氏が23%、ステイン氏が12%と合わせて3分の1以上の支持を得た。

リバタリアン党は1971年に結党。イデオロギーや政治面で民主、共和両党に代わる選択肢を提供している。経済から社会問題に至るまで、あらゆる分野で政府の関与を削減するのが党の主張だ。

具体的な政策やどこまで政府の役割を縮小させるべきかについては見解がまとまっていない。ただ、福祉の削減や経済面での規制緩和、FRBの大幅な改革を目指すことではほぼ一致している。社会問題に関しては、同性婚や薬物の合法化に賛成するなど一般にリベラルな方向性を取る。銃を所持する権利を強く擁護する一方、他国への軍事介入には懐疑的だ。

こうした理念の多くは、「肩をすくめるアトラス」などの著作で知られる作家のアイン・ランドが掲げた原則に根ざしている。利他主義よりも「エゴイズム」の方を好み、他人に危害を加えない限り個人の利益が何よりも優先されるとするリバタリアンの原則が一般に広まった背景にはランドの影響もあった。

リバタリアン党が目指すのは小さな政府だ

リバタリアンの核となる原則を巡っては多くの議論がある。CNNは今回、こうした議論に深入りするのではなく、現代のリバタリアンに直接取材しその思想の現状を探った。

ゲーリー・ジョンソン氏

ジョンソン氏は2012年に続き今年もリバタリアン党の大統領候補となった。「政府がやることが増えればそれだけ我々の自由は減少する。政府の縮小と個人の自由の拡大を支持するのがリバタリアンの考え方だ」と述べる。

ビル・ウェルド氏

副大統領候補のビル・ウェルド元マサチューセッツ州知事。最近になって共和党からリバタリアン党にくら替えしたため、副大統領候補に選出された際には議論を招いた。ただ、決選投票では党代議員の過半数の票を集めている。

ウェルド氏はこの投票を前に、リバタリアン党は「第三の道」を体現していると言及。「我々は社会問題については寛容で包摂的な立場を取る一方、経済面では保守的だ。二大政党のどちらにも当てはまらない」と述べた。

オースティン・ピーターソン氏

リバタリアン党の熱烈な支持者で、党の候補指名をジョンソン氏と争った。リバタリアンの思想について、「財政面では保守的」だと指摘する。社会問題に関しては「他人に押しつけない限り何でもあり」の立場を意味するという。

薬物の合法化を支持するリベタリアンも多いという

また人は自分の思いのままに生きることができると主張。伝統的な価値観に沿った生き方であれ強烈な薬物の摂取であれ、政府はライフスタイルを規制すべきではないと訴える。「社会問題に関し保守的なライフスタイルを選ぶことも可能だが、法律によって他人にそうした生き方を強制することまでは望まない」

妊娠中絶の問題については、多くのリベラルな党員と異なり保守的な立場を取る。胎児はすでに子どもにあたるとの見方を示し、「生命の神聖さなくして自由はない」と述べる。

ジョン・マカフィー氏

マカフィー氏はサイバーセキュリティーの専門家だ。今回リバタリアン党の大統領候補となることを目指したものの、指名獲得はかなわなかった。リバタリアニズムについては、経済や社会面での独自の生き方だとの見方を示す。

リバタリアン党のあり方を決める原則として同氏が挙げたのは4点。「第1に、個人の身体と精神は我々自身に属するものであって、政府や他者のものではない。第2に、お互いに危害を加えてはならない。第3に、お互いの物を奪ったり他人の財産を盗んだりしてはならない。第4に、合意した事項は守らなければならない」としている。

カーラ・ハウエル氏

リバタリアン党全国委員会の政治責任者を務めるカーラ・ハウエル氏。同氏によれば、党として公式に提唱しているのは「政府の最小化と自由の最大化」だ。

具体的な政策としては、減税や薬物取り締まりの中止、機能していない政府機関の民営化を挙げる。また軍事介入の中止や外国への資金援助の打ち切りも党の方針だといい、平和の促進や歳出削減につながるとしている。

ハウエル氏によれば、基本となる考え方は「政府の役割を今日より大幅に縮小すること」だという。

リバタリアン党とは何か

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