クリントン氏のメール問題、「極めて不注意」も訴追求めず FBI

FBIのコミー長官はクリントン氏の訴追を求めないと述べた

2016.07.06 Wed posted at 13:17 JST

(CNN) 米大統領選の民主党候補に確定しているヒラリー・クリントン前国務長官が在任中の公務に私用のメールアドレスを使っていた問題で、連邦捜査局(FBI)のコミー長官は5日、同氏は「極めて不注意」だったと批判しながらも、訴追を求めないと発表した。

コミー氏は、クリントン氏が国務長官を務めた2009~13年、同氏や国務省職員らが機密度の高い情報を極めて不注意に扱ったと指摘。長時間に及んだ会見の中で、政府の業務に無防備なメールシステムを使うべきではないことを認識する必要があったと厳しく注意した。

同氏は一方で、そこに法を犯す意図や重大な過失は認められないとの見解を示した。司法省はこの判断に従い、クリントン氏の訴追を見送る可能性が高い。

私用メール問題は、12年にリビア東部ベンガジで起きた米領事館襲撃事件をめぐる調査の過程で発覚した。クリントン氏はこれまで、私用のメールアドレスを公務に使ったことを認める一方、機密扱いの情報を送受信したことはないと主張してきた。

コミー氏によれば、FBIはクリントン氏が在任中に使っていた複数のサーバーや携帯端末を徹底的に調べた。

その結果、クリントン氏が退任後の14年に国務省に提出した在任中のメール3万通のうち、52件のメールのやり取りに含まれた110通に、送受信の時点で機密扱いとされていた情報が含まれていたことが分かった。8件のやり取りには、最高機密に相当する情報も入っていた。

さらに2000通のメールについては、送受信時点では機密扱いに相当しなかったものの、結果的に機密情報を含んでいたと判定された。

また、職務に関するメールのうち、本人や職員が当時定期的に削除したり、国務省への提出前に弁護団が私的メールとともに誤って消去したりしたデータが、計数千件に上っていたことも判明。このうち3通が機密メールだったという。

ヒラリー・クリントン氏。同氏陣営の報道官は問題の解決に「満足だ」と述べた

しかしコミー氏は、クリントン氏がこれらのメールを意図的に隠そうとした証拠はないと述べた。

メールの内容が敵対国の手に渡った可能性については、クリントン氏のアカウントに直接何者かが侵入した形跡はないとする一方、アカウントに政府の保護がかかっていなかったことや、通信相手のアカウントがハッキングされたケースもあること、クリントン氏がこうした国の領内でもメールを使用していたことを指摘。「敵対勢力がクリントン氏のアカウントにアクセスした可能性はある」との見方を示した。

同氏は最終的に、過去に同じような状況で立件に至った例はないとの理由で、クリントン氏の訴追を求めない判断を下したと明言。政治とは無関係に公正な捜査をした結果だと強調した。

FBIの判断が出たことにより、クリントン氏は選挙戦のさなかに訴追されるという事態を免れる見通しになった。クリントン陣営の報道官は「すでに本人も認めている通り、私用メールアドレスを使ったのは間違いだった。我々はこの件が解決したことに満足している」と述べた。

一方、共和党候補に確定している実業家ドナルド・トランプ氏らは、コミー氏から厳しい注意があったことに注目し、クリントン氏への追及を改めて強める構えだ。

トランプ氏は「体制は仕組まれている。極めて不公平だ」とツイートした。また「「敵対勢力はほぼ間違いなくヒラリー・クリントン氏をゆすりにくるだろう」とも述べて、大統領には不適格だとした。

ライアン下院議長は「訴追を見送れば恐ろしい前例をつくることになる」と主張。共和党全国委員会のプリ―バス委員長はCNNとのインタビューで、「コミー氏の会見は刑事訴追の結論を予想させる内容だった」と語った。

クリントン氏のメール問題、訴追求めず

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