英EU離脱、再投票実現の可能性は 法的には障壁無し

国民投票のやり直しが実現するシナリオとは

2016.06.28 Tue posted at 17:43 JST

ロンドン(CNN) 英国は23日の国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱という歴史的な選択をした。しかし今のところ、実現に向けた引き金を引くことはためらっている。

そうした中で、EU離脱は実行に移さなければならないのかという新たな疑問が浮上している。以下にその可能性を探った。

国民投票の結果は無視できるか

国民投票そのものに法的拘束力はなく、結果が出ても法的には何も決まってはいない。

理論的には、政府が国民投票の結果を無視することもできる。だがそうなれば、離脱に1票を投じた52%の怒りを買うのは確実だ。

「国民投票だけではEU離脱は発動しない」と解説するのは欧州法に詳しいケンブリッジ大学のケネス・アームストロング教授。「そのためには政府による決定が必要だ」

具体的には、EUからの離脱について定めたリスボン条約50条を英政府が発動する必要がある。

残留派を主導してきたキャメロン首相はキャンペーン中、もし離脱派が勝利すれば自動的に50条が発動されると繰り返してきた。しかし実際に離脱派が勝利すると10月で辞任する意向を表明。同条項の発動は後任に委ねると発言して残留派に希望を生じさせている。

総選挙の実施が、実質的にEU離脱の賛否を問う2度目の国民投票になるとの見方も

アームストロング教授は、50条が発動されない可能性は「極めて薄い」としながらも、結局は政治的判断になると述べ、「主要政党が両方とも混乱状態にある中で、英政府の立場がどうなるかを見極めるのは難しい」と語る。

国民投票は「EUからの離脱を求める英国民の指示」であり、「無視してはならない」と同教授は強調する。それでも50条発動が先延ばしされるほど、政治が介入する公算は大きくなると指摘した。

国民投票のやり直しはあり得るか

残留派は今回の投票結果に失望し、再投票を呼びかける声も強まっている。やり直しを求める嘆願には350万人以上が署名。労働党議員も公の場でやり直しを要求した。

専門家によると、再投票を妨げる法的な障壁はない。しかし一部に不満があるというだけの理由でやり直しを行って、好ましい結果が出るとは思えない。

「2度目の国民投票を求める嘆願だけでEU離脱を阻止できるとは思わない」とアームストロング氏は言う。

可能性があるとすれば、総選挙を実施して実質的にEU離脱の賛否を問う2度目の国民投票とすることはできるかもしれない。

「そのためには3~4カ月以内に総選挙を実施する必要がある。そうすれば、国民に対して本当にそれを望むのかどうか問い掛けることができる」(アームストロング氏)

EU各国には、英国に対し離脱条項の発動を強制する権限はない

総選挙の可能性

キャメロン首相の辞意表明に伴って必ずしも総選挙が実施されるとは限らない。しかし英国が歴史的な岐路に立たされる状況の中で、新指導部に指針を与えるための総選挙が必要だというコンセンサスが浮上することもあり得るとアームストロング氏は話す。

ストラスクライド大学の政治学者ジョン・カーティス氏は、キャメロン首相の後任の政府に対する信任が否決されれば、総選挙が実施される公算が大きいと予想した。

スコットランドと北アイルランドの拒否権発動

有権者の62%がEU残留を支持したスコットランドでは、自治政府のスタージョン首席大臣が離脱に対する議会の拒否権発動の可能性に言及した。さらに、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票の実施についても検討するとした。

56%が残留を支持した北アイルランドのマクギネス副首相は、アイルランドとの統合についての投票を呼びかけた。

キャメロン首相は27日、国民投票の結果に対してスコットランド議会が拒否権を発動する権限はないと強調した。

EUが英国を締め出す可能性

EU首脳は英国が直ちに50条を発動しないことに苛立ちを示しているものの、EUが英国に対して発動を強制できる実効的な権限はない。

アームストロング氏によれば、50条を発動できるのは離脱する加盟国のみであり、他の加盟国が発動することはできない。

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