水と電気とネットを供給、「ワットリー」がアフリカを変える

カプセルを思わせる形状の多目的機器「ワットリー」=ワットリー提供

2016.06.27 Mon posted at 18:25 JST

(CNN) 開発チームが「世界最大のソーラーコンピューター」と呼ぶ多目的機器「ワットリー」は、アフリカ農村部に飛躍的発展をもたらす可能性を秘めている。

このワットリーは、イタリア人とスペイン人が携わる同名の新興企業が開発した機器で、外見は未来型宇宙カプセルに似ている。しかし、この機器の目的は人々に電気やきれいな水、インターネットサービスを提供することにある。この機器の普及により、アフリカ農村部の生活・経済は一変する可能性がある。

現在、サハラ以南のアフリカでは、総人口の3分の2以上に当たる約6億2500万人が電気のない生活を送っており、さらに全体の39%の人々は安全な飲み水すら得られない。

「これは、(水、電気、インターネットという)文明の基礎的3本柱を欠く人々を救うためのインフラ面の解決策だ」と語るのはワットリーの創設者マルコ・アッティサニ氏だ。

「われわれは人々を21世紀の中心部へと導く」(同氏)

水処理システムの利用で1日5000リットルの飲料水が確保できる=ワットリー提供

特許技術

ワットリーの動力源は、モジュールの表面に設置されたソーラーパネルから取り込む太陽エネルギーで、このエネルギーが140キロワットの内蔵バッテリーを通じて電気に変換される。

このバッテリーが、ワットリーの水処理システムの動力源になっている。このシステムはグラフェンを使ったフィルターで水をろ過した後、沸騰させ、蒸留する。このシステムで、1日5000リットルの安全な飲み水の供給が可能だ。

またこのバッテリーは、半径800メートル以内で無線インターネット接続が可能なハブや、電子・モバイル機器のための充電器の動力源にもなっている。

開発者らによると、ワットリー1台を15年間使用した場合に削減できる温室効果ガスの排出量は2500トンに上り、これは石油5000バレル分に相当するという。

同社はすでにガーナの農村部で試作品のテストを行っており、今後はナイジェリアとスーダンを皮切りにアフリカ大陸全体にワットリーを普及させる計画だ。

機器の普及はアフリカの農村社会に多大な恩恵をもたらすとみられる=ワットリー提供

現地のパートナーや外国人投資家

アッティサニ氏は今年7月、見込み客や投資家らに、長さ40メートル、重さ15トンという、より規模の大きなワットリーの最終設計を発表する。

アッティサニ氏は「すでに複数の大企業の支持を得ているが、まだ企業名は明かせない」とし、大手の携帯電話会社やエネルギー関連会社が興味を示していると述べるにとどまった。

またこのプロジェクトは、欧州連合(EU)の研究イノベーション計画「ホライズン2020」から140万ユーロ(約1億6600万円)の出資を受けている。

EU報道官は「このプロジェクトは、特にアフリカにおいて多大な社会的、経済的効果をもたらす可能性がある」とし、さらに次のように続けた。

「このプロジェクトの目的は、クリーンなエネルギーと水という生命維持に欠かせない2つの資源を切に必要としている国の人々にこれらの資源を提供し、(中略)最終的には数百万人の生活水準の向上に貢献することにある」

しかしアッティサニ氏は、この機器を広く普及させるには、地元の非政府組織(NGO)や市民社会の協力が必要と訴える。

アッティサニ氏は「いかなる技術も人的要因なしに世界は変えられない」とし、「現地のパートナーがロジスティックスを担い、宣伝を行い、教育に関与し、機能を活用することになる」と付け加えた。

地元の子どもたちと触れ合うワットリーの開発メンバー=同社提供

経済成長の促進

ワットリーは、生活に最低限必要な資源を提供するだけでなく、経済を急成長させる可能性も秘める。

「われわれは、ワットリーをきっかけに地元の起業家が事業を立ち上げてくれればと考えている」(アッティサニ氏)

同社は、向こう8年以内にアフリカ全体で1万台のワットリーを設置する意向で、それにより5万人の雇用創出を見込んでいる。その多くはワットリーや、ワットリーが生み出す製品の建設・保守に関連する職になるが、生活に不可欠なサービスの確実な提供から恩恵を受ける企業を通じて間接的に発生する職もある。

アッティサニ氏は、現地化された持続可能なモジュールを通じてサービスを提供するというビジネスモデルは、今後さまざまな変化をもたらすと考えている。

アッティサニ氏は、「いずれ多くの企業がワットリーに似た技術を開発するだろう」とした上で、「それにより、世界で新たな経済パラダイムが生まれる可能性がある」と指摘した。

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