リビアでの対ISIS戦略、「理にかなわず」 米軍将官が批判

現状の米軍の戦略に批判的な見方を示したトーマス・ワルドハウザー海兵隊中将

2016.06.23 Thu posted at 10:09 JST

ワシントン(CNN) オバマ米大統領が米軍の次期アフリカ軍司令官に指名しているトーマス・ワルドハウザー海兵隊中将は23日までに、上院軍事委員会の指名承認公聴会に臨んだ。同氏はこの席で、リビアで過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の関連組織に対する空爆を控えてきた米軍の戦略は「理にかなわない」とする見方に同意した。

軍事委員会の委員長を務める野党・共和党の重鎮ジョン・マケイン議員が、米軍には確固とした対リビア戦略があるかと質問したのに対し、ワルドハウザー氏は「現時点で全体的な大戦略があるとは承知していない」と明言した。

米軍がISISを攻撃する場合、現状ではまずホワイトハウスから承認を得る必要がある。委員会ではこの点をめぐり、もう1人の共和党重鎮リンジー・グラハム議員から、ワルドハウザー氏がホワイトハウスの承認なしで攻撃を命じる権限を得るとしたらそれは「賢明」なことか、と質問があった。

ワルドハウザー氏は「賢明だと思う。リビアで我々の目的を果たすのに役立つことは確かだ」と答えた。

グラハム氏はさらに、ISISが米国に「差し迫った脅威」を及ぼしていると述べ、ワルドハウザー氏も同意した。グラハム氏は続いて、米国はそれにもかかわらず、ISISのリビア支部を空爆していないと指摘。「これは理にかなわないことではないか」と問い掛けた。ワルドハウザー氏は「その通りだ」と同意する立場を示した。

ワルドハウザー氏はまた、米軍がリビアに大規模な地上部隊を配置していないことを指摘し、もっと多くの兵力が必要だと主張した。

現在リビアには約5000~8000人のISIS戦闘員がいるとみられる=ISIS

グラハム氏は公聴会の最後、現状にはっきりと異を唱えたワルドハウザー氏の姿勢を高く評価し、「当委員会でこれほど率直な証言を聞いたことはなかった」と称賛した。マケイン氏も「あなたとともに仕事をすることを楽しみにしている」と語った。

リビアでの空爆をめぐっては、国防総省のクック報道官が同日の会見で「軍事攻撃の決断を気軽に下すことはない」と強調。米軍がリビアでISISの幹部らを空爆したことはこれまでもあり、いずれは再開するつもりだと述べた。そのうえで、同国は現在、政権確立に向けて前進している最中だと指摘した。

米軍に全体的な大戦略がないとの見解に対しても、リビアが今「複雑な状況」にあることは明らかだと語り、政権の確立を最優先するべきだとの考えを示した。

国防総省はリビアに小規模な特殊部隊を送り込み、ISISに対抗する地元勢力との関係構築を図ってきたことを認めている。2月には数回にわたって空爆を実施し、ISISの戦闘員40人以上を殺害した。

リビアでは最近、国連の後押しを受けて「国民合意政府」が結成され、3月末には首都トリポリに入った。西部ミスラタを拠点とする政府系の民兵組織は最近、ISISを中部シルトの拠点から追放する作戦を成功させている。

米中央情報局(CIA)のブレナン長官が先週、議会で語ったところによると、リビアには現在、約5000~8000人のISIS戦闘員がいると推定される。

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