EU残留支持の英議員、銃撃され死亡 国民に衝撃

英イングランド北部でEU残留派の議員が銃で撃たれ、殺害された

2016.06.17 Fri posted at 09:58 JST

ロンドン(CNN) 英イングランド北部で16日、野党労働党のジョー・コックス議員(41)が路上で銃撃され、死亡した。同議員は英国の欧州連合(EU)残留を支持していた。残留の是非を問う国民投票を1週間後に控え、国民は衝撃を受けている。

コックス議員は労働党のホープとして頭角を現していた。英国で現職の議員が殺害されたのは、1990年に過激派「アイルランド共和軍(IRA)」の自動車爆弾で保守党の議員が暗殺されて以来。

英PA通信によると、コックス議員はイングランド北部リーズ近郊の地元バーストールで集会を終えた直後、銃撃されて刃物で刺され、約1時間後に死亡が確認された。

ウエストヨークシャー警察によると、間もなく現場近くで男が拘束され、火器などの凶器が回収された。PA通信によれば、拘束されたのはトミー・メア容疑者(52)で、銃撃事件に関連して取り調べを受けている。

警察は、事件が起きた状況や犯行の動機などについて詳しいことは明らかにしていない。

しかし事件を目撃した現場付近のカフェ経営者はPA通信に対し、「男は銃撃の前後に2、3回、『英国を第一に考えろ』と叫んでいた」と証言。男が撃った銃弾3発のうち、最後の1発がコックス議員の頭部に命中したと話している。

別の目撃者によれば、地面に倒れたコックス議員を男が蹴りつけ、近くにいた男性に止められると、かばんから銃を取り出して議員を撃ったという。

銃撃事件の容疑者が住んでいたとされる住宅を警察が捜索した

警察は同日夕、バーストールにあるメア容疑者の自宅を捜索した。近所の住民によれば、同容疑者は長年1人暮らしをしていて、定職には就いていない様子だったという。

英国ではEU残留の是非を問う国民投票を1週間後に控えて残留派と離脱派の論戦が激化。主張に虚偽やねつ造があるとして、双方の議員に対する国民の批判も高まっていた。

殺害されたコックス議員はEU残留を支持。前日の15日には夫が2人の娘を連れてテムズ川にボートを浮かべ、EU残留を訴えるキャンペーンを展開していた。

事件を受けて、両陣営とも16日の運動を中止すると発表した。

EU離脱を支持する極右政党「ブリテン・ファースト」は、事件への関与を否定する声明を発表。「こうした行為を奨励したことはない」と強調している。

キャメロン首相は同日ジブラルタルで予定していたEU残留を訴える集会を中止。「彼女は大きな心を持った非常に思いやりのある議員だった。地元にとって、議会にとって、そして院内を通じてのスターだった」とコックス議員をしのんだ。

フランスのオランド大統領や、米国務省のカービー報道官も哀悼の意を表した。

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