米国へのテロ攻撃、真の脅威は「国内」に

2016.06.14 Tue posted at 17:39 JST

(CNN) 米フロリダ州オーランドで12日に発生した銃乱射事件はこれまでに起きた恐ろしいパターンに適合している。過去15年に米国で起きた死者の出たテロ攻撃は全て、米国市民か合法的な永住者によって実行されてきた。個人が起こすローンウルフ(一匹オオカミ)か2人組によるテロであり、アルカイダやイラク・シリア・イスラム国(ISIS)といったテロ組織と正式なつながりもなければ、そこで訓練を受けたこともない。

2001年の米同時多発テロが、アラブの外国生まれのテロリスト19人によって実行されたため、多くの米国人は、米国でのテロ攻撃は米国市民よりもむしろ外国人によって実行されるものだと考えているのかもしれない。

しかし、同時多発テロ以降で最悪のテロ攻撃を実行したオマル・マティーン容疑者はニューヨークで生まれた米国市民で、両親はアフガニスタンから米国に移住してきていた。

実際、アフガニスタンからアルカイダが指示を出し、外国の実行犯だけが関与した同時多発テロ以来、米国市民や合法的な永住者が米国における本当のテロの脅威となっている。そこには、2013年にボストン爆破テロを実行したツァルナエフ兄弟や、その4年前にテキサス州フォートフッドで13人を殺害したニダル・ハサン陸軍少佐が含まれる。

マティーン容疑者は2度、FBIの事情聴取を受けていた

別の意味で、マティーン容疑者も米国の典型的なジハーディスト(聖戦戦士)を名乗るテロリストだ。マティーン容疑者は過激派の可能性があるとして米連邦捜査局(FBI)の監視網に引っかかった。これはボストン爆破テロのタメルラン・ツァルナエフ容疑者(死亡)と同様で、ツァルナエフ容疑者については、2011年に過激派の可能性があるというロシア政府からの通知を受けて捜査が行われた。

同様に、ハサン被告は、イエメンの過激派の聖職者と頻繁にメールのやり取りをしていたため、フォートフッドで事件を起こす1年前にFBIの注意を引いた。

マティーン容疑者は2013年、同僚に扇動的な発言をし、FBIの調査を受けた。1年後には、フロリダ州ベロビーチで育ちアルカイダへの勧誘を行っていたモナー・アブサルハ容疑者とのつながりによって調査対象となった。アブサルハ容疑者は2014年、ヌスラ戦線のメンバーとして自爆攻撃をしてシリアで死亡した。

しかし、最終的には、FBIは、マティーン、ツァルナエフ、ハサンの各容疑者の事件について、追うことはなかった。

犠牲者をいたむ人々=オーランド

米当局によれば、マティーン容疑者はオーランドのナイトクラブに対する襲撃を実行する際に警察への緊急通報の中でISISへの忠誠を誓ったとされるが、同容疑者がシリアでISISから訓練を受けたという証拠は出てきていない。これは130人の死者を出した昨年11月のパリ同時多発テロや32人の死者が出た今年3月のベルギー連続テロのテロリストたちとは異なっている。

今分かっていることを基にすると、マティーン容疑者は、米同時多発テロ以降に米国に現れた他のジハーディスト(聖戦戦士)を名乗るテロリストと同じように見える。同時多発テロ以降、米国では300件を超えるジハーディストによるテロがあった。実行犯は、よく想像されるような短気な若者ではない。実行犯の平均年齢は28歳で3分の1が既婚者で、3分の1が子持ちだ。マティーン容疑者は、事件を起こしたときは29歳で、結婚を2度経験し、3歳の息子もいた。

ホームグロウン(国内育ち)のテロの脅威は、米国の法執行機関に複雑な問題を提示している。一匹オオカミ型のテロリストは、米諜報機関が盗聴できるようなタイプの通信手段である電子メールや電話などで外国のテロ組織と連絡することはない。彼らはまた、FBIが監視できるようなタイプの共謀者と会合を持つこともない。

マティーン容疑者のような実行犯の検知は、さらに複雑さを増している。事実、同容疑者は世界的なセキュリティー関連企業で勤務したことがあり、フロリダ州で警備員のライセンスも持っていた。このことは、ハサン被告と同じように、法執行機関からの疑いの目をそらしてしまった可能性もある。

オーランドの事件が我々に思い起こさせるのは、こうしたFBIのあらゆる捜査にもかかわらず、ときには米国人のテロリストが襲撃を成功させてしまう可能性があるということだ。

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